第8章 【オオカミ少女と不二王子】
周ちゃんの真っ直ぐな目に見つめられ、その力強い腕に抱きしめられ・・・
あぁ、なんてバカなことを考えていたんだろう・・・心からそう思った。
周ちゃんは昔からそうだった。
大切な人を守る為、自分のすべてをかける人。
この腕に小さな頃から何度も守られてきたのに、私は何をそんなに怖がっていたのだろう・・・
もう迷わない。
自分の心に嘘をつく必要なんてない。
大丈夫、周ちゃんなら私を1人にしない。
私はもう2度と笑顔をなくしたりしない。
私は自分のポケットから白い花を取り出して、周ちゃんの胸のポケットにそっと挿した・・・
今はそれだけで精一杯で、何も言えなかったけど、彼はそれですべてを理解してくれたのだろう・・・
私を見つめる周ちゃんは本当に優しい目をしていた・・・
周ちゃんは私を真っ直ぐに見ていて・・・
私はまたその目から視線を外せなくなっていて・・・
「今度は・・・逃がさない・・・」
周ちゃんがそう囁く・・・
あの時、周ちゃんの部屋で劇の練習をしたときは、怖くて・・・不安で・・・逃げてしまった・・・
でも今はもう・・・不安なんてない。
お芝居じゃない。
錯覚でもない。
周ちゃんの目は、私を見つめていて私を求めている。
そして私もあなたを・・・
私は少し照れながら・・・コクンと頷き瞳を閉じる・・・
そして周ちゃんの唇と私の唇が始めて重なり合った―――
最初は触れるだけのキス・・・
そして2度、3度と角度を変えて、だんだん深いものになっていく・・・
お互いの気持ちを確かめ合うように・・・
そして離れていた間の2人の距離を埋めるように―――