• テキストサイズ

【テニプリ】桜の木の下で

第8章 【オオカミ少女と不二王子】




「ふぅ~~~じぃ~~~~!!!」


遠くからのマイクの音声にお互いにびっくりして離れる。
聞きなれた声が周ちゃんの名前を呼んでいる。


「菊丸くん・・・?」
「うん・・・英二だね・・・」


何がおきたのか・・・
いまいちよくわからずにオロオロしてしまう。


「中庭でラブラブ中の、不二周助くん~!!」


なっ・・・!!
中庭でラブラブ・・・って、それって、まさに今の状況で・・・


どうして・・・?
混乱してうまく頭が働かない・・・


「・・・英二のやつ・・・仕方がないな・・・」
「周ちゃん?」


周ちゃんは既にすべてを理解したような笑顔で・・・
私の手をとり2歩3歩と幕まで進んだかと思うと、勢いよく幕を開けた・・・


その瞬間、ステージ上につけられた簡易のスポットライトが付いて私たちを照らす。


グラウンドを見ると沢山の生徒達がこちらを見ていて・・・
菊丸くんが私達に向かってブイッ!とVサインをしていて・・・
美沙ちゃんが私の名を呼び大きく手を振っていて・・・


周ちゃんはそれに答えるかのように私の肩に手を回すと


私を胸の中に引き寄せた―――


それとと同時に冷やかしの歓声と、女の子たちの悲鳴が沸きおこる。
私はまだ何が起こったのかよく分からずに、その光景をまるでテレビの画面を見ているような、そんな感覚で見ていた・・・


「璃音!不二くん!早くおいで!ラストダンス、始まるよ!!」


美沙ちゃんのその声に、私は我に返り、全校生徒が注目するこの状況に顔が真っ赤になる。


「クスッ・・・行こうか?」


そう周ちゃんが私に手を差し出す。
その手をとろうとした私の耳に、女の子達の悲痛な叫びと私に対する罵声が聞こえ、思わず足がすくんで身体が固まる。


「大丈夫だから・・・」


彼はそう言うと、私の髪を撫でてくれる・・・
そんな彼の優しい瞳が私の心を溶かしていく・・・


私は自然と笑顔になり、周ちゃんの手をとって一歩踏み出し、そして2人で歩き出す。


臆病な自分に別れを告げて・・・


そして共に過ごす未来へと―――




不二周助編
「オオカミ少女と不二王子」完
/ 153ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp