• テキストサイズ

【テニプリ】桜の木の下で

第8章 【オオカミ少女と不二王子】




* * *


学園祭当日の午前中は喫茶店で忙しく、午後からは中庭に作った特設ステージでクラス演劇が開催された。
体育館は文化部のほうで使うため、シンデレラの舞台にぴったりの中庭をダメもとで申請したら見事に通ったのだ。


おそらく実行委員の乾くんと美沙ちゃんのおかげだろう。
本当にこう言うときは(もちろんこう言うときだけじゃないけど)すごく頼りになる2人だ。


肝心のクラス演劇はというと、あんなに嫌がっていたシンデレラ姫の菊丸くんは、本番ではなんだかんだとノリノリで、舞踏会のワルツではアクロバティックなステップでステージ中を跳ねまわり、終始王子様をリードしていた。


その挙句12時の鐘の退場シーンでは、調子に乗ってバック転で退場し、勢いよくウィッグを吹き飛ばしたものだから、ガラスの靴の代わりにウィッグがぴったりの姫を探す、という不二くんの天才的なアドリブで会場は大爆笑だった。


そしてその不二くんの王子様姿には、学園中の女性徒がため息をついた・・・
無理もない、本当によく似合っていたのだから・・・
その王子様の衣装も、彼が囁く愛の言葉も・・・


彼の口から語られた愛の言葉は、大抵の女の子を魅了して、まるで自分が囁かれているような、そんな錯覚に陥らせたことだろう・・・


まるで不二くんの部屋での私のように―――


残り時間は演劇部の後輩達の応援に費やした。
引退しているのだから特に仕事はないのだけれど、学園祭といえば演劇部にとっては重大なイベントの1つ。
人手はいくらあっても足りないくらいだ。


そしてそれも落ち着いた頃、気が付けば学園祭はもう終盤に差し掛かっていた。


結局、中学最後の学園祭と言っても、全然模擬店を回れなかったな・・・
それどころか一日中走り回って疲れてしまった。
少し休みたい・・・


ゆっくりできる場所・・・おそらく教室は無理だろう。
演劇部の部室も後輩でいっぱいだろうし・・・


ふと中庭に目を向ける。
大きな桜の木を中心に作ってある特設ステージ・・・
あの中なら今日は終日関係者以外立ち入り禁止になっているし、幕の中なら人目に付かない。
幸いなことにセットの椅子やテーブルもあるし、休むのには最適かも・・・


うん、そうしよう・・・そう思って私は中庭へと足を向けた。


/ 153ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp