第2章 【バカとテストと越前リョーマ】
教室をでて一緒に下校する。
途中、自販機でファンタを2本買うと、今日の御礼と1本リョーマくんに手渡す。
そういえば、テニス部のみんなと一緒に帰ったことはあっても、2人きりってはじめてかも?
変に意識してしまって何を話せばいいかわからず、長い沈黙が続いた。
「先輩、大丈夫っすよ。」
「・・・え!?な、なにが?」
「英語、不安なんでしょ?」
「・・・英語・・・あぁ、英語、うんうん。」
「違うの?ずっと黙ってたから。」
ふーん、こいつなりに励ましてくれるんだ。
その気持ちが嬉しくて、不安より頑張ろうって気持ちになる。
「そりゃ不安だけどね、でもなるようになるでしょ!大丈夫、私一夜漬け派だから~。」
「ふ~ん、らしくなってきたじゃん。」
「そう?私らしいってどんなの?」
「バカにうるさくて、バカに正直で、バカに単純で・・・」
バカバカって、すっかり私=バカだと思ってるわね、こいつ。
ちょっと!と睨み付ける私を無視し彼は続ける。
「バカに明るくて、バカに一生懸命で、バカに前向きで・・・
・・・そんな先輩にいつも俺、励まされてる―――」
―――え?
初夏の風がが舞い上がり、2人の間を吹き抜けていく。
それから急にあたりが静寂に包まれたように感じる。
そして彼はテニスの時のような真剣な顔で私を見ていて、かぁーっと顔が赤くなり、それを悟られたくなくて、そんなこと言ったって何も出ないわよ~?と慌てて顔をそらした。
「ま、とにかくさ、こうなったら本当にいい点数とってみせるから!」
「・・・いい点数って何点くらい?」
「そうねぇ~、40点くらい?」
「志、低すぎ、俺が教えたんだからもう少しいい点数とって貰わないと困るんだけど?」
「じゃぁ・・・目指せ80点!!わはははは!!」
「調子乗りすぎ。」
「本当・・・ムカつくわね。」
「ま、頑張ってよね。」
こいつ、やっぱりムカつくやつだわ。
・・・でも、それだけじゃないってわかった。
今だって、黙って家まで送ってくれた・・・。
「うん、頑張る。本当に今日はありがとうね。」
そう言って笑顔で別れるとすぐに私は机に向かう。
テスト頑張って良い点数を取らなきゃ。
彼を見返すためにも、そして丁寧に教えてくれたことに報いるためにも―――