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【テニプリ】桜の木の下で

第8章 【オオカミ少女と不二王子】




リビングに戻ると、姉さんと彼女が話をしていた。
姉さんに会ったのも久々だろう。
女同士で話が盛り上がっていたようだ。
彼女はあの愛らしい笑顔だ・・・


「お待たせ、ピッタリだったよ。」
「あ・・・良かった・・・」


僕が来た途端、彼女の笑顔はまたぎこちないものに変わる。
そこまであからさまに変わられるとやっぱり寂しいな・・・


「周助!璃音ちゃんがうちに来てくれるなんて久しぶりね!」
「うん、そうだね、最後に来たのは小学校を卒業した春休みかな?」
「あ・・・うん、たぶん・・・」


さっきまでは姉さんと笑顔で話していたのに・・・
誰の目も気にしなくてよい場所ですら僕に壁を作るのは、彼女がそれ程僕に心を閉ざしている証拠かな・・・


「そうだ、璃音ちゃん、久しぶりに少し僕の部屋によって行かない?」
「え・・・?」
「・・・駄目、かな?」
「駄目って言うか・・・」


案の定、彼女が戸惑っている。
伏し目がちで目を泳がせ、少し頬をそめて・・・
クスッ、そんな顔されると少し意地悪をしたくなるよ?


「もしかして、他の男の部屋に入ることを嫌がる彼でもいるのかな?」
「え!?・・・いない・・・けど・・・」
「じゃあ・・・僕が何かしないか警戒してる?」
「う、ううん!そんなこと!」


彼女は真っ赤な顔をして否定する。
慌てて顔の前で、両手を大きく振って・・・
姉さんが、なんて事言うの!と僕を睨みつける。


うん、ちょっと意地悪な言い方だったね?


「はは、冗談だよ?・・・本当は、劇の練習に付き合ってもらいたいんだ。」
「え・・・?不二くん、セリフまだ入ってないの?」
「たぶん大丈夫だと思うけど、ちょっと確認したくて。どうも英二だと調子が狂ってね。」

「あ・・・そっか、菊丸くん、嫌がってなかなかちゃんとしないもんね。」
「うん、それにお互い、男同士でそう言う趣味はないからね・・・だからお願いできる?」


本当はセリフなんて完璧だけど、君を引き止める口実にはちょうどいい。
責任感が強い君のことだから、クラス演劇のためを思って絶対断らないだろう・・・


そう確信して君に頼む僕は卑怯だろうか―――?


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