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【テニプリ】桜の木の下で

第8章 【オオカミ少女と不二王子】




* * *


ロッキングチェアに座りクラシック音楽に耳を傾ける。
学園祭のクラス演劇の台本に目を通す。
セリフはすべて暗記した。
立ち位置なども頭に入っている。


台本を机の上に置き目を閉じる。
浮かんでくるのはあの子の顔。
幼なじみでクラスメイトの彼女。


いつの頃からか2人の間には距離が出来た。
1、2年の時にクラスが違ったから仕方がないのかもしれない。
ひと学年に12クラスもあるんだ。
クラスが離れていれば学校で会う機会なんて殆どない。


・・・いや、仕方がないなんてただの言い訳だ。


中学に入ってすぐの頃は時々話をしていた。
でもそれが彼女を苦しめることになっていた。
そして彼女は僕を避けるようになり、僕は彼女がそれを望むなら、なんて物分かりのいいふりをして、勝手な自己満足をした。


今思えばなんて浅はかだったのだろう・・・
僕が守ってあげれば良かっただけなのに・・・


3年生で同じクラスになって、久々に話した彼女はすっかり余所余所しくなっていた。
以前は僕を「周ちゃん」と呼び、愛らしく笑っていた彼女。
それが「不二くん」に変わり、僕に笑顔を見せてくれなくなっていた・・・


自業自得、かな・・・そう深くため息をつく。


ふと空気を入れ替えようと窓を開けて、僕は目を見開いた。
虫の知らせだったのだろうか・・・彼女が僕の家の前にいた。


呼び鈴を押そうとしてはためらって、少し後ずさりをする。
何度かそれを繰り返した後、彼女は小さなため息をついて僕の家に背を向けた。


僕は慌てて部屋を出て階段を駆け下りる。
乱暴に玄関を開け、璃音ちゃん!と彼女に声をかける。
すると彼女はビックリした顔をして振り返った。


「えっと・・・衣装・・・直したから・・・」
「・・・試着すればいいんだね?」
「・・・うん・・・」


なるほど、学園祭までもう時間がない。
きっと責任者としては1日も無駄にできないのだろう。
ここで僕が試着を済ませれば、もしサイズがあわなくても今夜中に手直しが出来るというわけか・・・


僕は彼女をリビングで待たせ、自室で試着をする。
きちんと採寸をしてなおしてくれたのだ。
もちろん、今度はちょうどピッタリだった。


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