第8章 【オオカミ少女と不二王子】
「でね、当日、全校生徒と訪問客には花が配られるの。」
「花?」
「そう、男の子にはピンクの花。女の子には白い花。造花だけどね。」
「うんうん」
「で、それを好きな人と交換してもらうってわけ。男の人が胸に白の花を挿していて、女の人がピンクの花を挿していたら交換成立ってこと。」
「それでラブラブ大作戦なんだ・・・」
「うん、で、後夜祭のダンスのラストダンスは交換した同士だけが踊れるっていう・・・」
「へぇ~、素敵!」
「璃音ならそう言うと思った。私はちょい面倒。」
「そんなこと言って、彼氏とラブラブなくせに!」
「それとこれとは別。」
そういいながら、仕方がないから交換してやるけど、なんて頬を染めて言う美沙ちゃんがすごく可愛いかった。
「それにしても乾くんって顔に似合わず、随分ロマンティックな企画考えたね?」
「あー、なんか、この間出来た彼女の発案らしいよ。」
「へぇ~、幸せのおすそ分けって感じだね。」
「ずっと鼻の下伸ばしてて不気味だったわ・・・まぁ、その企画以外の案っていったら、全員が汁を飲まされる恐ろしいものだったから、彼女よくやった!って感じだけどさ。」
それは彼女ナイス!そう言って2人で笑った。
それにしても、みんな幸せそうでいいな・・・
好きな人と交換、か・・・
一瞬、不二くんの顔が浮かび、慌ててプルプルと首を振る。
そんなこと絶対出来ないし、私には関係ないイベントになりそうだな・・・
「璃音は・・・不二くんに告白しないの?」
「・・・え・・・どうして・・・?」
「違うなら忘れて?ただなんとなく璃音は今、不二くんの顔を思い浮かべたんじゃないかな?って思っただけ!」
相変わらず鋭いなぁ・・・
美沙ちゃんに図星を付かれて私は首をすくめた。
「でもさ、不二くん、絶対いっぱい告白されるよ?」
「・・・え・・・?」
「まぁ、普段からそうだけどさ、そんなイベントやったらダメもとで当日まで凄いことになると思うよ?」
そう・・・だよね・・・これを機会にって女の子、沢山いるよね・・・
「もし、不二くんが誰かと付き合うことになったら・・・璃音、本当にいいの?」
美沙ちゃんの言葉に心臓がギュッと痛くなる。
良いも悪いも・・・私には関係ないし・・・そう言ったけど、心の中がザワザワした。