第7章 【とある乾の禁書目録】
初恋の書店のお姉さんには4,2秒で失恋したが、今回は9日と23時間08秒で失恋か・・・
でもあの時とは違って失恋がこんなに苦しいものだとはな・・・
それ程彼女が俺の中では大きい存在になっていたということか・・・。
「小宮山さん、俺は君が好きだった。」
俺を見上げていた彼女の目が見開き、すぐに目が泳ぎだす。
一段と強い風が舞い上がる。
「すまない、君を困らせるつもりはないのだが・・・君が大和部長を好きなのはわかっている。」
もう一度彼女は目を見開き、俺を見上げる。
「君が部長に見せたあの表情を見て俺はその仮説を立てた。そして先ほど俺が部長の名を出した時の君の顔は、その仮説を定説に変えるのに十分だった・・・」
そう言い終えたところで俺は動きが停まる。
気が付くと彼女の目から大粒の涙が零れ落ちている。
な、なぜそこで君が泣くのか・・・泣きたいのはこちらの方だと言うのに・・・
「なんで・・・そう、なるの・・・?」
「なんでって・・・だから・・・」
「違うもの・・・私、祐大のこと、好きじゃないもの・・・」
いや、しかし・・・そう言って俺は混乱する。
彼女は大和部長を好きではない?
ではあの顔は何だと言うのか・・・?
計算しろ!
分析しろ!
データに基づいて・・・ってそのデータが今はない!!
ぬぉぉぉぉぉぉ!!
頭を抱えて俺はしゃがみ込む。
するとあのね、乾くん、と彼女が俺の肩に手を乗せたから、俺は彼女を見上げる。
「図書室で顔が赤かったのはね、祐大に乾くんのことを相談していたから。」
「へ・・・?」
「さっきのは、乾くんに話を聞かれていたらどうしようって思ったから。」
「それは・・・その、どういう意味だろうか・・・?」
しゃがみ込む俺と同じ目線になるように彼女もしゃがむ。
「私、祐大に恋の相談、していたんだけどな?」
「恋の・・・相談・・・」
大和部長に俺の相談をして頬を赤く染めていた・・・
そしてそれは恋の相談・・・
いや、そんな都合の良い話があるはずがない。
これは理論に基づいた分析ではなく、希望的観測に過ぎない・・・
「でね、さっきの告白、過去形じゃなく現在進行形だと私、嬉しいんだけどな?」
だから、私も乾くんが好きってこと、そう言って彼女は笑い、やっと俺も笑顔になった。