第7章 【とある乾の禁書目録】
「私は決して怪しいものではありません、通りすがりのワンちゃんです。」
そう、俺はかわいい犬のキグルミに入っている。
発見されるのは想定内だ。
だがキグルミを着ていれば、何とでもごまかしようがある。
ゆるキャラブームに乗った、完璧な作戦だ!
しかも俺だとは絶対ばれない。
「どこからどう見ても怪しいでしょう!!」
「なぜ!?」
「・・・乾くん!?」
・・・この声は、小宮山さん!
騒ぎを聞きつけてやってきたのだろうか・・・
それにしても、なぜ俺だとわかったのだ!?
完璧な変装なのに・・・
それにおかしい、彼女が必死に笑いをこらえている。
何がそんなに面白いんだ?
「小宮山君、この不気味な犬は君の知り合いかね?」
不気味だと?失敬な!
通販で俺に一番似合うのを吟味してポチった妖怪時計の人面犬のキグルミを・・・
・・・人面犬・・・
しまった!顔が丸出しだった!!
これでは俺だとばれるのも当然だ。
キグルミ=中が誰かわからない、はずだったのに・・・
理屈じゃない!!
チッキショーーーーー!!!
「は、はい、彼は中等部の乾くんです。」
「中等部の生徒がなぜ高等部で着ぐるみをきてウロウロしているのかね?」
「そ・・・それは・・・」
俺は言葉に詰まる。
まさか彼女のデータをとっていたとは言えない。
「文化祭です!!」
「「は?」」
思わず、校長先生と声が重なり、校長が俺をにらむ。
いやいや、と苦笑いでそれを受け流す。
「彼、中等部の文化祭実行委員なんです!私、最近、中等部に行くのでそこで文化祭の相談を受けてて・・・文化祭で使うキグルミを見せてくれるって約束してたんです!」
とっさに彼女が機転をきかせてくれて、うまい言い訳を考えてくれた。
「今日の放課後また中等部でって言ったのに、乾くん、待ちきれなかったのかな~?」
「はい、我慢しきれず着て来てしまいました、すみません。」
彼女が、もー、めっ!と俺のおでこをつんと指さし、俺はやっちゃったー、と頭をポリポリ書く。
さながら、わざとらしいコントのように。
校長先生はそんな俺と小宮山さんを本当か~?と何度か交互に見た後、すぐにその恰好をなんとかしなさい、と言って去っていった。
ふぅ・・・とりあえずは助かったようだ。