第7章 【とある乾の禁書目録】
それから、彼女は毎日放課後になると俺に声をかけてくれた。
ある日は屋上で、またある日はグラウンドで、その次の日は渡り廊下から・・・
乾くん!と笑顔で手を振る彼女を見るのが毎日の楽しみになり、放課後が待ち遠しくもあった。
そして毎日増えていく彼女のデータをノートに書き留めるのが日課になった。
好きな食べ物
好きな音楽
好きな映画
好きな本
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色々な彼女の好きが俺のノートに書き足された。
が、肝心のデータは手に入りそうにない。
彼女の好きな人は誰なのだろうか―――
こうなれば自分で調べるしかない。
でもどうやって・・・
ここはやはり隠れてこっそりのぞく手で行くか・・・
いやまて、それでは前の二の舞にはならないだろうか?
男女の違いはデータを集める場合も考慮しなければならない。
以前のように訴えられてはたまらない。
いや、それ以前に嫌われたくはない。
俺はさんざん悩んだ挙句、良い手を思いついた。
今こそ、以前から温めておいたアレを使うときに違いない。
よし、これで彼女にばれずにデータをとれる確率・・・98パーセント!
* * *
ふふふ、完璧な変装だ、よもやこれが乾貞治だとは誰も気づくまい。
次の日の昼休み、さっそく俺は作戦を決行することにした。
(・・・乾だ)
(乾、何やってんだ?)
(シッ、見ちゃ駄目だ、本人はバレてないつもりだ)
(とうとう、乾が壊れたか・・・)
外野がなんかうるさいが、まぁ、気にせずに行こう。
さて、高等部に着いた。
まずは小宮山さんを探さねば・・・
しばらく歩き回り、俺は図書室で彼女を発見した。
笑顔で誰かと話をしているようだ。
相手は・・・棚の陰でここからは確認できない。
・・・おや?
俺はその時、彼女のある変化に気が付いてしまった。
笑顔で話すその頬が、俺が知っている彼女のどの顔よりも、桜色に染まっているではないか・・・
どういうことだ?
この状況で考えられる答えはやはり・・・そう言うことなのか・・・?
話している相手は・・・いったい誰なんだ・・・?
「あー、きみきみ、ここで何をしているのかね?」
「シッ!静かに!今、大事なデータをとっているところ・・・なんだ・・・?」
「コホン!」
振り返ると高等部の校長先生が怖い顔で睨んでいた。