第7章 【とある乾の禁書目録】
* * *
自宅に戻り、俺は彼女のデータをメモしたノートを読み返す。
なぜ彼女のデータをとろうと思ったのか・・・自分でもその行動の理由を説明するのは難しい。
ガス漏れと慌てて必死になる顔
却下!と指さして上目づかいで俺を見あげる顔
自分とは一切関係ないのに必死に企画を考える真剣な顔・・・
コロコロ変わるその表情を見ているうちに、彼女に興味が沸いた、というところだろう。
そう、あえて言うのなら、興味本位という言葉が一番適切だ。
制服の裾を伸ばし、小宮山璃音、と名乗った時の彼女の笑顔を思い出す。
小宮山璃音さん、か―――
ノートをぱたんと閉じ、眼鏡をくいっと人差し指で押し上げる。
彼女はどんな学生生活を送り、どんな休日を過ごし、どんな日々を過ごしているのだろうか?
何に笑い、何に涙し、何に怒り・・・
何を感じ、何を考え、何を語るのだろうか・・・
彼女への興味は尽きることなく次から次と沸き起こる
椅子の背もたれに寄りかかり、天井を見上げ、そっと目を閉じる
何を好み、何を慕い、何を求め・・・
心を寄せる人はいるのだろうか―――
厄介なものだな、そう呟くと、ふぅ、と一つため息を落とした。
* * *
次の日の放課後、俺は後輩たちのデータをとるため、テニスコートが見える教室から双眼鏡を覗いていた。
ふむ、海堂のスネークの角度が2、5度ほど上がっているな。
桃城のダンクのスピードも0.8キロほど早くなっているようだ。
わずかな間でこうも成長するとは・・・さすがだな。
いくらデータをとっても、やつらはどんどんその上をいく・・・
またデータを書き換えなくてはいけないな、そう呟きノートに書き込む。