第7章 【とある乾の禁書目録】
「おや、今気が付いたが、その制服は高等部の・・・先輩でしたか。」
「今頃気づいたの?高等部2年、小宮山璃音です。」
私が年上だと気が付くと、急に敬語になったのがおかしくて、少し大人びたデザインに変わった高等部のセーラーの裾をちょんと伸ばし、ため口でいいよ?と笑った。
すると彼も、中等部3年、乾貞治です、とちょっと照れた様子で笑い、はい、と返事をした。
「ところで高等部の生徒である小宮山さんがどうして中等部へ?」
「ん、部の後輩指導でしばらく出入りしてるの、許可はもらってまーす。」
そう言って私は校長先生の許可証を乾くんに見せると、彼は眼鏡をくいっと中指であげて、なるほど、とつぶやく。
「で、イベントなんだけど、なにか他の案はあるの?」
「うむ、乾杯(いぬい杯)青春学園逃走中、最後はみんなで乾杯~!(かんぱい)というのを考えているのだが・・・」
「・・・はい?それって・・・」
もうタイトルからして嫌な予感がしかしないけれど、一応かすかな望みにかけて内容を確認してみる。
「全校生徒のうちスポーツテストの50メートル走上位50人がハンターになり、全校生徒が色々な課題をクリアしながら逃げる。
無事に制限時間内逃げ切れたものには優勝カップに並々注いだ『飢える、噛む』を贈呈し、惜しくも捕まってしまった全員とハンターには紙コップサイズの『飢える、噛む』を配る。
そしてみんなで乾杯をして検討をたたえあうという・・・」
「それって、多分、みんなわざと捕まるし、しかも結局、無差別大量殺人計画のままだから。飢える、噛むは却下!乾くんの汁はすべて却下!」
黙って聞いていたけれど、予想以上の破壊力の企画に彼の話を途中で終わらせ、また先ほどと同じく、却下!と指をさす。
すると彼はまた残念そうに大きな体を小さくしたから、その様子がなんか可愛くてクスクス笑った。
男の子に可愛いなんて失礼かもしれないし、彼はどちらかというと身長も高くて可愛いタイプの男子ではないかもしれないけれど、なんか可愛いというか、ほっとけないタイプ?
思わず、乾くん、可愛い、と言うと、彼はやっぱりちょっと複雑そうな顔をして、心外だな・・・とつぶやいた。