第6章 【迷い猫海堂ラン!】
小宮山は立ち上がると、ありがとうと言いながら俺に手を差し出した。
一瞬、その手をつかみそうになるが・・・そんな格好悪いこと出来るか!!
俺は無視して一人で立ち上がる。
「お前、怖くなかったのか?」
「え?怖くないよ~?」
「何でだ?一応、女だろうが。」
「だって、海堂なら絶対受け止めてくれるから。」
あぁ?なんでんなこと言い切れるんだ、そう俺が言い終わらないうちに 小宮山は言葉をつづけた。
「海堂は私のこと、全部受け止めてくれるもの」
何て答えたらいいかわからず言葉に詰まる。
ずっと俺のことを見ていてくれた小宮山
根性のある癖に実は脆い小宮山
弁当をうまそうに食う小宮山
危なっかしくて放っておけない小宮山
色々なこいつの顔が頭の中を駆け巡る。
「あ・・うふふ・・・や、ちょ、まっ・・・あは!」
「あぁ?」
突然、笑い出したかと思うと、腹を抱えてうずくまる。
・・・本当に何を考えているかわからない奴だ。
「ごめ・・・海堂、はは・・・こ、これ!」
制服の胸元から、あの時の仔猫が顔を出した。
この子、降りれなくて鳴いてたの、そう言ってあいつはその猫に頬ずりをする。
「お前、その猫を助けようとして木に登ったのか?」
「へへ、そうなんだけど・・・降りれなくなっちゃって・・・本当にありがとうね」
お前もお礼をいいな、そう言って小宮山は俺に猫を差し出す。
頭をなでると、猫はゴロゴロと喉を鳴らす。
「この子も海堂のこと、好きみたいだね。」
私と同じ、そう言ってあいつがふふっと笑う。
その瞬間、中庭を秋風が吹き抜け、落ち葉が舞い上がる。
もう木に登っちゃだめだよ?と小宮山は猫を地面に降ろす。
猫は小宮山の足に刷りより、にゃーんと一鳴きして茂みの中に消えていった。
テメェも二度と登るなよ、そう小宮山に声をかけると、でもまた次も海堂が助けてくれるでしょ?とあいつが笑う。
チッ、仕方がねぇな、そう言って俺は小宮山の頭に手をのせる。
こんなじゃじゃ馬、俺しか面倒見れねぇしな、そう言うとあいつはまた笑った。
面倒なのに捕まっちまったな、そう思いながら俺も笑った。