第6章 【迷い猫海堂ラン!】
* * *
その日、俺はまた校内をランニングしていた。
中庭に差し掛かり、ふとあの時のことを思い出す。
あいつ、また寝てねーだろうな・・・
つい思い出して、チッ、なんで俺がっ!と頭を横に振る。
あいつが寝ていた桜の木の下で立ち止る。
最初はただガサツで図々しいやつだ、そう思っていただけだった。
でも実は自分を犠牲にして家族を守る、根性のあるやつだった。
何も考えてないように見えて、俺の悩みにも気づいていた。
中身がないように見えて、実はちゃんと色々見えている。
デカい弁当をうまそうに食う姿も悪くねぇ・・・
「あ、海堂!!良いところに!!」
思い出していたあいつの声が突然聞こえて驚く。
声のした方は・・・上・・・?
嫌な予感がして見上げると、案の定、小宮山が木の上から俺を見下ろしていた
「テメェ・・・んなところで何をしてやがる!?」
「いやー、登ったはいいけど、降りれなくてさ~」
女らしくないのはわかっちゃいたが、まさか木にまで登るとはな・・・
「あれほど少しは女らしくしろって言っただろうが!!」
「大丈夫!今日、スカートの中にジャージの短パンはいてるから!」
「そういう問題じゃねぇ!」
俺は大きくため息をついた後、こいつをどうやって助けるかを考える。
手を伸ばしても届きそうにねぇ・・・
俺も登ったら、こいつを抱えて降りることになるのか・・・
チッ・・・面倒くせぇ!!
「おい、小宮山!そこから飛べ!」
「・・・へ?」
「俺が受け止めてやる。」
「で、でも・・・。」
やはりその高さから飛び降りるのは無理か・・・
面倒くせぇが登って助けてやるか・・・
そう思った瞬間、小宮山と目が合った。
あいつはその瞬間、ニッと笑ったかと思うと俺目がけて飛び降りた。
正直、本当に飛ぶとは思わなかった。
不意を付かれたため、踏ん張りが利かず、衝撃でしりもちをついてしまった。
「海堂、大丈夫?」
「・・・あぁ、大丈夫だ・・・お前は?」
「私は平気!海堂がしっかり受け止めてくれたから。」
顔がすぐ近くにあるのに気がつく。
こ、こいつ・・・近くで見ると・・・
なっ!俺は何を考えているんだ!!
慌てて目をそらす。