第6章 【迷い猫海堂ラン!】
* * *
今日も終業の挨拶と同時に急いで席を立つ。
「小宮山さん、明日はカラオケね!」
「うん、楽しみにしてるね~」
そう言って、クラスの女の子たちに手を振り走り出す。
あれからお父さんに自分の気持ちを伝えることが出来た。
お父さんはファミリーサポートに登録してくれたり、色々と調べてくれたみたいで、私も少しは自分の時間を楽しめるようになった。
今の仕事がひと段落したら、少しは早く帰ってこれるようにもなるみたい。
スーパーでいつものように買い物を済ませ、いつものように弟の迎えに行く。
いつものように手をつないで歌を歌い、いつものように河川敷を歩く。
「おにーちゃーん!!」
「かーいどーう!!」
いつもと違うのは海堂が見えると、弟と一緒に大きく手を振ること。
海堂はすれ違いざま、私の頭をぽんと撫でてそのまま走り去る。
そして海堂の背中にむかって、頑張ってね~!と声をかけると、彼は振り返らずに後ろ手でガッツポーズをして応えてくれる。
そして私は前を向いて歩き出す。
今日も頑張ろう!と空に大きく手を伸ばす。
「よし!競争しよう!よーいどん!」
「あー、おねーちゃん、ずるいー!!」
走る 走れば 走るとき
なたは何を考える?
雨にも負けず 風にも負けず
雪にも負けず 暑さにも負けず
走り続けるあなた
見続ける私
走る 走れば 走るとき
私はあなたを考える―――
海堂薫編
「迷い猫海堂ラン!」完