第6章 【迷い猫海堂ラン!】
気が付いて見えたのは見慣れた天井
ここは・・・私の部屋・・・
いまいち働かない頭を押さえ、記憶の糸を辿る。
色々あって、海堂に嫌われて、なんかイライラして・・・
いつもの通り弟を迎えに行って、八つ当たりして、いつもの河川敷で意識がなくなって・・・
そして海堂が大丈夫かって私の名前を呼んで・・・
海堂・・・?そうだ、海堂に助けられたんだ・・・
だんだん頭が冴えてきて、肝心なことを思い出す。
弟は!?弟はどこに行ったの?
私は慌てて弟の名前を叫ぶ。
するとリビングからのドアが開き、弟がおねーちゃんと駆け寄ってくる。
安心して弟を抱きしめ、ごめんね、と謝る。
「起きたか?」
その声に心臓がドクンと跳ねあがる。
「・・・海堂・・・私・・・?」
「まずは着替えて来い、制服がしわになる。」
「あ・・・うん・・・」
急いで私服に着替えリビングに行くと、海堂が食えるか?とチャーハンを出してくれた。
「・・・これ・・・」
「勝手に作らせてもらった」
ありがとう、そう言って一口くちに入れる。
「美味しい~♪」
私は夢中でそれを頬張った。
食べ終わって気が付いた。
海堂にお礼、言ってない・・・。
「海堂、あの・・・ありがとう・・・」
「・・・どうってことねぇ・・・」
・・・なんか気まずい。
そして沈黙が続く。
「・・・なぜ言わなかった?」
「・・・え?」
「母親のこと、家の事や弟の世話を全部していること」
「あー・・・」
言いふらすことじゃないし・・・言っても仕方がないし・・・
そう言って苦笑いする私に、海堂は馬鹿野郎!と声を荒げた。
「一人で頑張って、それで何になる?テメェが倒れれば一番困るのは弟だぞ!」
「・・・そうだよ・・・ね・・・」
「一人で頑張りすぎんな、周りは迷惑だ」
「・・・う・・・ん・・・」
海堂の言葉が胸にしみこんでくる。
迷惑だ、そういう言葉とは裏腹に、その目は私の心配をしてくれているのがわかる。
「この間は・・・悪かったな・・・」
「え?」
「こんな生活してりゃ、勉強も出来ねぇのは仕方がねぇ・・・」
「ん・・・でもやっぱりダメだよね、勉強はしっかりしなきゃ・・・」
「まぁ、そうだけどな・・・」