第6章 【迷い猫海堂ラン!】
いつも通り河川敷を走っていると、いつもの場所でいつもの子連れとすれ違う。
普段通り特に気にせずに通り過ぎたら、後ろから子供の泣き声がして振り返る。
子供がおねーちゃん!と泣き叫んでいる。
どうやら姉の方が倒れたようだ。
慌てて大丈夫ですか!?と駆け寄り俺は再度驚いた。
倒れているのは小宮山じゃねーか。
この子連れが小宮山だったことに今まで気が付かなかった自分に対しての驚きと、こいつもなぜ言わなかったんだ?という疑問と、色々な思いが一瞬にして頭に浮かんだが、今はそれどころじゃねぇ。
倒れている小宮山を抱えて大丈夫か?と声をかけると、そっと目を開け、うわごとで俺に謝り、嫌わないで、そう言って意識を失った。
その言葉に俺の心臓がズキンと痛む。
「おにーちゃん、おねーちゃん、死んじゃう?」
「んなわけねーだろ!」
不安そうに弟が俺を見ている。
小宮山をよく見ると、寝てるだけみてーだ。
こいつは本当に、いつも寝てるやつだな・・・
俺はため息をつくと同時にほっと胸をなでおろした。
「本当に死なない・・・?」
「あぁ、大丈夫だ」
「ほんとに本当?」
なんだ、なんでこんなにしつこく心配してるんだ・・・?
ただ寝てるだけだ、そう言ってもその目から不安が消えねぇ・・・
「死んじゃわない?・・・おかーさんみたいに・・・?」
なん・・・だ・・・と?
お母さんみたいに死なない・・・?
どういうことだ?
母親がいないのか・・・?
とにかく、ここでこいつをこのままにしておくわけにはいかねぇ。
「おい、家まで案内しろ」
俺は小宮山を抱きかかえると、弟に道案内させて家まで連れて帰った。
家に着くと小宮山をベッドに寝かせる。
そして室内の片隅の仏壇と、どこか小宮山に似た雰囲気の女の人の写真が目に留まる。
小宮山に心配そう寄り添って離れない弟に、お母さんか?と確かめると、うん、と小さく頷いた。
「いつ亡くなったんだ?」
「僕が2歳の時だって。」
「家のことは誰がやってる?」
「全部おねーちゃんだよ」
「お父さんは?」
「寝てから帰ってくるって。」
そして俺はもう一度家の中を見回した。
とてもきれいに整理されていて、普段からきちんとしてあるのは一目瞭然だった。