第6章 【迷い猫海堂ラン!】
* * *
その日、俺はいつも通り休憩時間を利用して、校内をランニングしていた。
途中、俺の目の前に突然現れた猫に動きが止まる。
「みゃぁ?」
・・・フシュー・・・
周りに悟られないようにそっと近づく。
チッチッチ・・・
なっ!逃げやがった。
俺は待て待て、と猫を追いかける。
猫は俺の前をチョロチョロ走り、ちょっと走っては立ち止りこちらを振り返る。
追いつけそうで追いつけねぇ。
こいつ・・・はは・・・ははは・・・待て待て・・・
ベンチを飛び越え、渡り廊下を走り抜け、茂みをかき分ける。
潜り込んだ茂みを抜けると目の前に広がったのは中庭の桜の木。
ビュウっと一段と大きな風が沸き起こる。
猫はどこへ行った・・・?
「みゃぁ」と鳴き声が聞こえ、ここか!?振り返る。
そこに見えたのは横たわった人の足。
な、なんだ、倒れているのか!?と慌てて駆け寄る。
こ、こいつは、小宮山!?
「おい!・・・小宮山!!・・・おいっ!!」
「・・・ん」
小宮山がそっと反応したのでほっと胸をなでおろす。
なんだ、寝てるだけか・・・。
しかしこいつ、いつも寝ているな。
授業中もだが、休み時間もしょっちゅう寝てる。
何なんだ、こいつは。
だいたい、仮にも女がこんなところで寝るか!?
中庭でどうどうと寝る奴なんて、越前くらいかと思っていたぞ。
しかもこいつは女だ、スカートでだ。
・・・スカート・・・
思わず、小宮山の足に目がいき慌てて視線をそらす。
フシュー・・・と一つ、ため息をつく。
「おいっ!小宮山!!起きろ!!!」
肩の方を揺さぶって起こすと、かい・・どう?と目を開けた。
「起きたか!?」
「・・・かい・・・どう・・・がんば・・・れ・・・」
「あぁ?」
「・・・でも・・・ムリ・・・しない・・・で・・・」
その言葉に一瞬俺の動きがとまる。
頑張れ・・・無理しないで・・・だと?
さらに小宮山は続ける。
「・・・きょう・・・べんとう・・・な・・・に・・・?」
・・・こいつ、完全に寝ぼけてやがる。
いい加減にしろ!!そう耳元で大声を出してやると、うわぁとやっと慌てて起きやがった。
「・・・か、海堂!?・・・?何?・・・へ?」
まるでデジャヴだな・・・