第5章 【手塚ドロップ】
☆ ☆ ☆
その日は放課後、生徒会室で資料作成の続きをしていた。
市川さんの資料を先に作ったので自分の分が遅くなってしまった。
会計資料はこれでよし、生徒総会のプログラムも大丈夫・・・
各委員会や部活動からの報告も問題なし。
うん、だいたいこんなものかな・・・。
やっと終わったーと背伸びをし、それらをプリントアウトして窓際の席に置く。
ふと窓の外を見ると中庭の大きな桜の木が目に留まり、なんとなく窓を開ける。
手を伸ばせば届きそうな距離まで枝葉が伸びていて、見上げると上の方の枝はもっと大きく生い茂っていて、まるで生徒会室にいながら桜の木の下にいるかのようだ。
あたりはもうすっかり夕方で、だいぶ涼しくなってきていて、心地よい風が生徒会室に入ってくる。
仕事がひと段落して気が緩んだからか・・・嫌でもあのことが思い出される。
市川さんと付き合っているの?そう聞いた時にそれ認めた彼の顔・・・
この黄昏時の雰囲気も手伝ってか、当然のように自然と涙があふれてくる。
ガラッと生徒会室のドアが開いたので振り返ると、そこには手塚くんが立っていた。
泣いていたのを悟られたくなくて、私は慌てて涙を拭いてぎこちない笑顔を作った。
「・・・まだ残っていたのか?」
「あ、うん。資料が手間取っちゃって・・・でももう終わったから・・・」
そう言った途端、窓から一際強い風が吹き込み、先ほど作った資料が舞い上がった。
気流の流れのせいかどういう訳か・・・舞い上がった資料の1枚が窓から外へ飛び出して、私は慌てて身を乗り出してそれに手を伸ばた。
届いた!そう思ってほっとしたのも束の間、私の身体もそのままふわっと飛び出した。
あ、落ちる!そう思って目を瞑ったその瞬間、小宮山!!と彼に腕をつかまれ勢いよく引き戻された。
そして恐る恐る目を開けると
私は手塚くんの腕の中にいた―――