第4章 【タカさんに届け】
あれから1週間、あの日以来、練習を見に行っていません。
カバって言ったため、会わせる顔がないのです。
河村先輩はカバじゃないのに。
それではカバ村先輩になっちゃいます。
クッキーは美沙ちゃんがバリバリ全部食べてくれました。
まあまあね、これで安心して不二さんに渡せるわ、だそうです。
あ、何度も言いますが、これも美沙ちゃんの愛情表現なのです。
いつまでも手元にあるとウジウジしてしまうし、自分で食べられないので、美沙ちゃんが男前に食べてくれて良かったのです。
せめて美沙ちゃんの役に立ってくれれば、私のクッキーもうかばれるというものです。
☆ ☆ ☆
璃音ちゃんが部活に来なくなって1週間。
あの時の彼女の悲しそうな顔が頭から離れない。
彼女が練習を見に来るようになって、俺に話しかけてくれるようになって、もしかして俺目当てに通ってきているのかな?って思ったりもしたけれど、まさかこんな俺がって思って、あの時も誰に渡せばいい?なんて。
あー、やっぱりあれがまずかったんだよなぁ。
「ショッキーーーーーング!!」
「わっ!タカさん、大きい!」
「オーノーーーー!!・・・ごめん、自分で拾ってくるよ」
久々だな、こんな大ホームラン・・・
ボールを探すためテニスコートを離れると、尚更彼女のことを思い出す。
最初に彼女を見かけたのは学校の廊下。
前が見えないほどのノートを抱えてフラフラ歩いていた。
危なっかしいなぁ、なんて思ってみていたら案の定階段を踏み外しそうになって慌てて彼女を支えたんだ。
それから2人で職員室まで並んで歩いて、その後練習を見に来てくれてタオルを貸してくれて・・・。
彼女が来てくれるようになって、毎日の部活がますます楽しくなったのに、なんであんなこと言っちゃったのかなぁ。
「あー・・・俺、何やってんだろ、あー・・・」
あれ?中庭にいる・・・あの銀色の髪は・・・
「亜久津じゃないか!」
「なんだ、河村か・・・」
「どうして青学に?こんなところで何しているんだ?」
「あぁ?」
亜久津が顎で指した方をみてみるとそこには、ダダダダーーーン!と檀君がいた。
「・・・というわけだ。」
「ははは、心配でついてきたってわけか。」
「・・・チッ」
なんだかんだ言って亜久津は優しいからね。