第4章 【タカさんに届け】
「・・・んで、その男子に恋をしたと?」
「そうなんです。璃音の王子様です・・・」
美沙ちゃんに言われて、最初から説明したところです。
説明しながら脳裏には何度も王子様の笑顔が浮かんできます。
「んで?」
「んで?・・・って?」
美沙ちゃんはなぜか、はぁ~とため息をつきました。
「その人の名前は?」
「・・・・・・・・」
はっ!私、王子様の名前、聞き忘れました!
それどころか、お礼も言っていません!
璃音、人生最大の失敗です・・・
☆ ☆ ☆
「美沙ちゃん、璃音の王子様を探す旅に付き合ってくださいよ~」
「うるさいわね、バカに付き合ってる暇はないのよ!不二先輩の応援に行くんだから!」
放課後、美沙ちゃんに王子様探しを手伝ってくれるようお願いしているうちに、気が付いたらテニスコートにやってきていました。
美沙ちゃんは時々、練習を見学に来ているのです。
なぜならテニス部の不二先輩にお熱なのです。
美沙ちゃんは頭もよいし、性格も良いけど、男の趣味だけは悪いと思います。
テニスコートには見学の女の子が沢山いました。
その間をかき分け、美沙ちゃんはずんずん進んでいきます。
さすが美沙ちゃん、たくましいです。
たくましい人は男女問わず大好きです。
無理やり人波をかき分けてコート入口付近の最前列までくると、大きな声が聞こえてきました。
「ぬどりゃーーーーーー!バーーーーニング!!」
こ・・・この声は!!!
「キャーーー!不二さぁ~ん!!ね、璃音、不二さんカッコいいでしょ?」
「・・・・・・」
「ねってば!・・・璃音・・・?璃音ーーー・・・駄目だこりゃ・・・」
美沙ちゃんが顔の前で手を振って呼びかけていたようですが、私の視線は王子様にロックオン。
声も王子様のものしか聞こえていませんでした。
こんなところで会えるなんて・・・やっぱり私と王子様の小指は運命の赤い糸で結ばれているに違いないです。