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【テニプリ】桜の木の下で

第3章 【桃城ペダル】




「うわー・・・凄い人・・・」


私は購買部の前で圧倒されていた。
今日はお母さんが寝坊しちゃって、お弁当を作ってもらえなかったものだから、珍しく購買部でパンを買おうとやってきたのだ。


やってきたのはいいけれど、殺気だった人たちの前に成すすべなくと言った感じで困り果てていた。


「おばちゃん!俺、焼きそばパンと、コロッケパンと、メロンパンと、カツサンドね!」


すぐ後ろから桃城くんの大きな声が聞こえ、思わずびっくりして振り返る。


「ほら、お前は何にするんだよ?ぼーっとしてると売り切れちまうぜ?」


そう言う桃城くんの得意げな顔がすぐ近くにあって、とドキッとする。


「あ・・・た、玉子サンド・・・」
「おばちゃん!あと玉子サンドも追加~」
「はいはい、わかったからちゃんと列に並びなさい!」


周りの生徒たちに笑われ、へへと照れ笑いする桃城くんと一緒に2人で列に並んだ。
みんなに笑われたのも恥ずかしかったし、予想外で桃城くんと一緒になれて恥ずかしかったし、なんかもう色々恥ずかしかった。


無事にパンと自販機で飲み物も購入でき、改めてありがとうね、と彼にお礼を言う。
せっかくだから、一緒に食べようか、と中庭のベンチに移動する。


季節はもうすぐ夏。
気温は高かったけど、中庭は木々がちょうどよい日陰を作り、爽やかな風が吹き抜け枝葉を揺らし、午後の授業までの数十分を過ごすには最適な環境だった。


「気持ちいいね、桃城くん。」
「ふぁひぃふぁ?」


ん?と思って桃城くんを見ると、もうすでに思いっきり焼きそばパンを頬ばっていて、さすが桃城くん、とクスクス笑った。


それにしてもすごく食べるね?
なんて気軽に聞いたけど、その後私は驚愕することになった。
桃城くん、毎日お弁当4つもってきているんだって!
既に3つは食べ終わり、あとは部活の前に食べるんだとか。
お母さん、大変だーなんて思った。


「お前はそんなんで足りんのかよ?」
「え、足りるよ?っていうかこれが普通だよ。」
「もっと食えよ、だからこんなにほそっこいんだぜ?」


そういうと彼は私の手首をつかんだ。
その瞬間、一段と強い風が2人の間を吹き抜けた気がした。


あ、わりぃ、と手を離した彼の顔はすごく赤かった。
う、うん、とうなずいた私も、多分同じくらい赤かったと思う。

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