第10章 【菊丸ステップ】
「やっほ~~~い!!」
「は、はぁ・・・英二くん・・・速いよ~・・・!」
「あ、ご、ごめん!大丈夫?」
夢中になって引っ張りすぎた?
そういや、彼女のペースを考えてなかった・・・
本当、俺って全然駄目じゃん!
「うん・・・もう・・・大丈夫だよ。」
「そっか、良かったにゃ~。」
安心して胸をなでおろす俺に、璃音ちゃんが声をかける。
あ!そうだ!!と、はっとした顔をして。
「英二くん、1位、おめでとう・・・キャッ、え、英二くん!?」
「うわっ!ご、ごめん!!」
可愛い笑顔でおめでとうなんて言われ、思わず彼女に抱きついちゃった。
自分でも気づかないうちに・・・って、俺、かなり重症?
「え・・・えっと・・・そ、そうだ!」
「ん?なになに?」
「そういえば、借り物はなんだったの?」
そう彼女が赤い顔をして、借り物の紙を覗き込むから、俺は慌ててそれをジャージのポケットへと押し込む。
「気にしな~い、気にしな~い♪」
不思議そうな顔をする彼女の背中を押しながら、一緒に応援席へと引き返す。
出迎える友人たちの拍手と冷やかしに、ブイッとVサインで応えると、自分の席に腰を下ろし、そっとポケットの上からその紙に触れる。
借り物
それは「好きな人」―――