第10章 【菊丸ステップ】
◆体育祭◆
中庭の桜の葉が濃い緑で生い茂る頃、今日は待ちに待った体育祭。
「英二くん、頑張ってね!」
「うんにゃ~、応援あんがと!璃音ちゃん!」
やっほ~い!!キミに応援してもらったら、俺、いつも以上に張り切っちゃうもんね!
徒競走は余裕で1位!
動体視力とコントロールを生かした玉入れも圧勝。
綱引きは・・・タカさんのクラスに負けちゃったけど・・・
クラス対抗リレーは俺と不二の活躍で、ぶっちぎりで優勝したもんね。
璃音ちゃんも障害物競争を一生懸命頑張っている。
運動神経は・・・そこまでいいほうじゃないみたいだけど・・・頑張っている姿がまた可愛い。
「英二、次の借り物競争なんだけど・・・」
「なになに、どったの?不二?」
「さっきの騎馬戦で、借り物競争に出場するはずの市川くんが怪我しちゃってね、代わりに英二が出てくれない?」
「ほいほ~い♪任せといてよん!」
もし「メガネ」だったら乾のを奪ってやろー!イシシシシ。
・・・なんて思いながら選んだ紙を見て、俺は身体が固まった。
こ、これって・・・ど、どうしよう・・・
「英二!何やってんだよ!急げよ!!」
誰かの声援で我にかえる。
そうだ、何も迷う必要ないじゃんか!
応援席で俺を応援してくれている彼女の元に向かう。
迷わずに、真っ直ぐに・・・
「璃音ちゃん!俺と一緒に来て!!」
「え!?は、はい!」
応援と冷やかしの歓声の中、ゴールの白いテープを目指す。
初めて繋いだ手・・・高鳴る鼓動・・・
緊張しているのを悟られないように必死に走り、そのまま1位でゴールテープに飛び込んだ。