第10章 【菊丸ステップ】
キーン コーン カーン コーン・・・
うわ!予鈴?もうそんな時間!?
桜に見惚れ・・・る彼女に見惚れ、時間がたつのに気付かなかった。
進級1日目から遅刻はさすがにヤバイ。
「急がないと遅刻しちゃうね。」
「あ・・・ま、待って!!」
校舎に向かおうとする彼女の腕を思わずつかんでしまい、ご、ごめん、と慌てて手を離す。
「あの・・・その・・・えっと・・・名前・・・教えてくんない・・・?」
やべ~・・・俺、今、すんげー怪しい奴?
彼女、ぜってー引いてるよな・・・
初対面の男に腕をつかまれて、名前聞かれて・・・
印象最悪じゃんか。
でも、ここで別れたら、もう会えないかもしれない。
1500人近くいる青春学園中等部。
近くのクラスでもなければ、また会える確立はメチャクチャ低い。
ここで何もせずに別れたら、俺、絶対後悔する!
一目惚れだったんだ―――
「璃音。」
「え?」
「名前、小宮山璃音。」
「あ・・・小宮山・・・璃音・・・璃音ちゃん!あ、あの・・・俺は・・・」
「菊丸英二くん。」
「えぇ!!??」
な、なんで彼女が俺の名前を知ってんのさ?
初めてあった・・・よね?
つうか、前に一度会ってたら絶対忘れるはずがない!
「テニス部の菊丸英二くん、一年間よろしくね?」
そっか・・・俺、一応強豪と言われる青学テニス部のレギュラーだし、それで覚えていてくれたのか・・・
うんうん、一年間よろしく・・・って、一年間・・・!?
「3年6組、私達、同じクラスだよ。」
満開の桜、新しい出会い、舞い降りた天使。
中学最後の1年間、最高に幸せな予感―――