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【テニプリ】桜の木の下で

第9章 【大石の大罪】




「市川さんのことは・・・不思議なことに平気なんだ。」


驚きはしたけどね、そう言って笑う秀一郎の顔はすごく晴々としていて、私は彼が傷つかなくて良かった・・・と、ほっと胸をなでおろす。


「俺はいいんだよ・・・変わりに璃音が怒ったり泣いたりしてくれるからね・・・」


そう言って秀一郎は、すまなかったな、と私に謝る。


「あの時、本当は分かっていたんだろう?それで彼女につかみかかって・・・」
「・・・あー・・・まぁ・・・」
「それなのに俺、璃音だけ責めてしまって・・・本当にごめん。」


そう秀一郎が何度も謝るから、もういいよ?私こそずっと避けちゃってごめんね?そう私も謝る。


「俺のために怒ってくれてありがとう・・・泣いてくれてありがとう・・・ずっと好きでいてくれて・・・ありがとう・・・」


秀一郎の口から「すまない」次に出てきたのは、私に対しての沢山の「ありがとう」・・・


それが私の心を潤していく。
まるで乾いた地面に恵みの雨がしみこむように―――


「そして・・・ずっと大切にしてくれていて・・・ありがとう・・・」


そう言って秀一郎はポケットから握りこぶしを私の前にさしだすと、シャランという懐かしいチェーンの金属音とともに、あの指輪が目の前にぶら下がる・・・


その指輪を見た瞬間、ドクンと心臓が大きく脈打ち、全身から力が抜けていく。
ちゃんと自分で立っているのかもわからないほどに・・・


そっと震える手を指輪に延ばすと、秀一郎が私にそれを手渡す。


あぁ・・・良かった・・・そう呟やき、胸の前でギュッと握りしめる。
もう2度とこの手に掴めないとあきらめていた指輪が、今、また私の手の中に戻ってきた喜びで、涙が次から次とこぼれ落ちる・・・


よく見ると引きちぎったはずの留め金がきちんと修理されていて、秀一郎がなおしてくれたの?って聞いたら、あぁ、新しいのを買うより、璃音はこのほうが喜ぶと思って・・・そう秀一郎が恥ずかしそうに笑った。


私はそれを首から下げる。


あるべきものがあるべき場所に戻ってきて、本当はとても軽いはずのおもちゃの指輪が、2人の間に色々なことがあった分、以前よりも少し重くなったような気がして、その重さがなんか心地よかった。

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