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【テニプリ】桜の木の下で

第9章 【大石の大罪】




「私の方こそ、ありがとう・・・」


そう言って、私は秀一郎の胸に寄り添うと、そっと彼の背中に腕を回す。
さっき桜の木にしたように、しっかりと回した腕に力を込めると、


秀一郎、大好き・・・そう、そっと呟いた。


今まで、気が付かなくて本当にごめんな?と秀一郎はもう一度謝ると、これからは今まで璃音が俺を想ってくれた何倍も、今度は俺がキミを想い続けるよ・・・そう言って私の髪を優しく撫でた。


その秀一郎の大きな手と、火照る頬を冷やす木枯らしが


気持ち良かった―――



  * * *



「おはよう、璃音!」
「・・・おはよう、秀一郎。」


季節は巡り、暖かい春風が吹き抜ける朝、相変わらず玄関の門を開けたところで私たちは挨拶を交わす。


変わったのはお互いの制服。
私は少し大人っぽいデザインにはなったけど、基本は青春学園の制服だからさほど違和感はない。


だけど秀一郎は今までの学ランと打って変わって、オシャレなデザインのブレザーで、ネクタイなんか絞めちゃって、私は笑いをこらえるのに必死になる。


そんな私に秀一郎は、そんなに変かな・・・?と苦笑いで手を差し出すと、見慣れるまではね、と私はにじむ涙を指で拭い、その手をとって歩き出す。


私は遠回りになるけれど、電車通学の秀一郎に合わせて、駅まで一緒に歩く。


学校が違うようになっても家が隣ということで、こうやって朝の登校の時間や帰宅後に一緒の時間はとれるから、そう言う面で私たちは恵まれていると思う。


それでも駅に着いて手を離す瞬間は、やっぱり離れるのが寂しくて、繋いだ手に力が篭る。


「そうだ、璃音、今度の休みは一緒に出かけないか・・・?」


そんな私の寂しさを察したのか、秀一郎がそんなことを言い出して、私は嬉しくて笑顔でうなずいた。


「ボウリング5時間や水泳は嫌だからね?」
「ははは、水族館なんか・・・どうかな?」
「あら、秀一郎の割にはまともじゃない?」


そして私たちは笑いあう。
彼の背中が見えなくなるまで見送ると、私はくるりと向きを変えて走り出す。


私の胸元で揺れる指輪が今日もキラキラ輝いていた―――



大石秀一郎編
「大石の大罪」完
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