第9章 【大石の大罪】
* * *
2学期最後の授業は相変わらずろくに頭に入ってこない。
まぁ、この時間だけでなく、もうあれからずっとなんだけど。
あの日の秀一郎の顔がずっと頭から離れない。
あの出来事は今まで築いてきた絆をすべてぶち壊すだけの破壊力だった。
・・・いや、ぶち壊したのは私か・・・
あの後、秀一郎は何度も電話をくれた。
ちゃんと話をしようとメールもくれた。
家にも何度も来てくれた。
それらをすべて無視したのは私だ。
なんて言っていいのかわからなかった。
どんな顔をして会えばいいのかもわからなかった。
そして会ってしまえば、私はたぶん告げてしまう。
長年、自分の胸にしまい続けてきた想いは、いつの頃からか私の胸の中には納まりきらず、気が付けばどんどん外に溢れ出し、もう自分では止められない・・・
告げればいくらなんでも、もうただの幼なじみには戻れない。
それが怖くて秀一郎と向かい合うことを拒否して私はずっと逃げ回っている。
・・・ってそれで結局、ぶち壊してんだから結果は同じか・・・
まぁ、いいか、もう潮時だよ、男と女の幼なじみなんて。
高校も別々になるし、それまで逃げ続けてうやむやにして終わらせよう。
終わらせようと思うとまた胸のあたりがギュッと苦しくなる。
制服の上から胸の指輪を握ろうとして、そこにあるべきものが見当たらず、あ・・・と我に返る。
だから指輪、ないんだってば・・・
2週間たってもその違和感には慣れず、何度もこの行動を繰り返してしまう。
いつか慣れる日が来るのだろうか・・・
って慣れなきゃダメなんだよね・・・
もう指輪、ないんだから・・・
そう思うとまたどうしようもないほど胸が痛む。
フンだ、私がこんなに苦しいのも全部秀一郎のせいなんだ!
秀一郎なんかあの天使の皮をかぶった悪魔に全部吸い取られてしまえ!
へーんだ、ざまーみろ、ケーッケッケ!!!
って、こんな笑い方してたら、私が悪魔みたいじゃん。
「あーーー、もう!!!なんでそうなるのよ!!!」
「・・・小宮山さん、先生、どこか間違ってますか?」
・・・・・・あっ。
「小宮山さん、HRが終わったら後片付け、お願いできるかしら?」
笑顔の悪魔がここにもう一人いた・・・