第9章 【大石の大罪】
次の休み時間、オレは意を決して席を立つ。
自分にケジメをつけるために、そして本当に大切なものを失わないように・・・
例えそれで市川さんを傷つけても、自分に嘘をついてまでつき合い続けることなんて出来ない・・・
彼女の教室につくとドア近くの生徒に彼女を呼んで貰う。
そして人気のない屋上まで一緒に移動する。
「大石先輩、どうしたんですかぁ?」
そう無邪気に笑う彼女になんて切り出したらよいかわからず、なかなか言葉が出てこない・・・
「あ、もしかしてクリスマスの話ですか?あの指輪、いつ買いに行きます?」
「そのことなんだけど・・・すまない!」
90度に身体を曲げて、全身全霊で彼女に謝る。
「実は他に好きな人が出来た・・・。キミを傷つけてしまうのは本当に申し訳ないと思っている。でもこんな気持ちのままキミとつき合い続けるなんて失礼なことは出来ない・・・だからその・・・」
思い切ってそう彼女に告げる。
そっと顔をあげると彼女は俯いたまま小さく震えている・・・
あぁ、やっぱり泣かせてしまった・・・長い間俺を想ってくれたのに、結局1ヶ月も経たないうちに別れることになるなんて、そりゃショックだよな・・・
市川さんの泣き顔を想像し、俺は罪悪感で胸が苦しくなった。
「・・・・・・・・・・はぁ?」
必死に涙をこらえていた彼女から、今まで聞いたことがない低い声が発せられ、オレは思わず聞き間違いかと耳を疑った・・・
「他に好きな人が出来た、だあ?こんなクリスマス直前になに言ってんの?」
「・・・い、市川さん!?」
「指輪はどうしてくれるのよ!こんな直前に言われたって、他にアレをくれる男、見つからないじゃない!!」
彼女は、あのいつもの彼女・・・なのだろうか・・・?
いや、確かにそうなんだけど、目の前で起こっているこの状況をなかなか頭が理解しようとしない。
「しかも何、自分が振ったつもりでいるわけ?こっちは最初からあんたなんか好きじゃないっつーの!ちょっと優秀で将来有望だから気があるふりしてやっただけなのに、調子に乗りやがって、この勘違いの玉子頭!!」
そう彼女は一気にまくし立て、屋上のドアをバンッと叩き付けるように閉めて去っていった。
後に残された俺はただ呆然とするしかなかった・・・