第9章 【大石の大罪】
* * *
それから半月が過ぎ、今日は2学期最後の終業式だ。
あれから璃音とは何の話も出来なかった。
もちろんこの2週間、なんとか彼女と連絡をとろうとしたけれど、見事なまでに避けられて、結局、顔を見ることすらできなかった。
そう言えばこんなに長い期間、璃音の顔を見ないのは初めてじゃないかな・・・?
そう思うと何故か胸の辺りが痛み、どうしようもない息苦しさを感じた。
「大石ぃ~、英語の教科書、貸してくんない?」
「英二、最終日まで忘れ物か?もうすぐ受験なんだし、もう少ししっかりしないと駄目じゃないか!」
英二の忘れ物はいつものことなのに、何故か無性にイライラし、思わず彼にそう言い放つと、はっとしてごめんと謝る。
「別にいいよん、俺がしっかりしないといけないのは本当のことだし!」
そう言う彼らしくない態度に、思わずえぇ!?とびっくりすると、なんだよ、俺だっていつまでも子供じゃないぞ!と英二が笑う。
「大体、らしくないのは大石の方じゃん!」
「オレの方・・・?」
「うんにゃ~、昨日はぼーっとして階段から落ちそうになるし、一昨日は弁当ひっくり返しちゃったし!最近絶対おかしいよ。何かあった?」
そう言われてみると確かにそうかもしれない・・・でも何かと聞かれても思い当たることなんて・・・
「・・・小宮山さん、じゃない?」
「「不二!?」」
突然現れた不二に驚き、英二と声が重なる。
「驚かせちゃった?ゴメンゴメン、大石に昨日貸した英語の辞書をまだ返して貰ってないことに気がついてね・・・」
「あぁっ!?ゴメン、不二!」
俺はその事実を思い出し、慌てて机の中から辞書を取り出すと、ありがとう、助かったよと不二に返す。
「・・・ところで不二、どうしてそこで璃音が出てくるんだい・・・?」
「・・・さぁ、どうしてだろうね・・・?」
そう言って不二は不適に笑う。
その言葉の意味をぜんぜん理解できないオレとは対照的に、やっぱ不二もそう思う?と英二は何かピンと来たようで得意げに笑った。
「2人とも何か言いたいんだい?気になるからはっきり教えてくれよ!」
そう言うオレの言葉に2人は顔を見合わせると、どうする?と英二が不二に訪ねる。