第9章 【大石の大罪】
* * *
「本当にごめん・・・」
璃音が走り去った後、俺は脅える彼女を連れて、学校の近くの公園に来ていた。
「いいえ・・・先輩が悪いんじゃないですから・・・」
「彼女、決して悪い娘じゃないんだけど、ちょっと喧嘩っ早いというか、手が出やすいところがあってね・・・」
「大丈夫です・・・先輩が守ってくれたから・・・」
美沙、嬉しかった、そう言って彼女が俺の肩に持たれかかるから、俺は心臓が飛び出しそうになり、いや、その・・・あの・・・っとしどろもどろになる。
それにしても、どうして璃音はあんな行動に出たのだろう・・・?
確かに喧嘩っ早くて手が出ることも珍しくない。
でもそれは俺や英二限定というか、ほぼ俺限定で、しかも何か必ず理由がある場合に限ってだ。
今朝だって俺が失礼な勘違いをしていたからで・・・まぁ、あの程度で殴っていいのか?という気もしないでもないが・・・とにかく決して理由なく暴力をふるうような娘じゃない・・・
だけどさっきは璃音が市川さんに殴りかかる、まさにその瞬間で・・・周りの話を聞く限り完全に璃音に非があるようだ・・・
何をやっているんだ・・・璃音・・・
俺は彼女が投げ捨てた指輪をじっと見つめ、そしてギュッと握りしめる・・・
「先輩、それ、何ですか~?」
「え?・・・あ、いや、何でもないんだ・・・」
別に隠すつもりじゃないけれど、それでも彼女に話すことではない気がして言葉を濁す。
それにしても、こんなのまだ持っていたんだな・・・それもネックレスにして肌身離さずに・・・
視線に入った指の絆創膏と合わせて、懐かしさが込み上げる。
考えたら何年一緒にいるのだろうか・・・
そばにいるのが当たり前で、璃音の事なら家族のようになんでもわかると思っていた。
だから今日、なぜ璃音があんな行動をとったのか・・・
彼女のことがわからないなんて初めてのことで、俺は酷く混乱していた・・・
そして大嫌いと泣いて走り去る璃音の顔が頭から離れない・・・
「先輩、聞いてます?」
彼女の声で俺は我に返る。
「あぁ、すまない、なんだい?」
「これですよぅ~」
彼女はもう!と頬を膨らまし、一冊の雑誌を広げると俺の前に差し出した。