第9章 【大石の大罪】
「ところで大石ぃ、彼女からなんて告白されたのさ?」
「えぇ!?なんだよ?急に・・・」
「いーじゃん!大石、全然教えてくんないんだもん!」
その会話に一瞬ピクッと体が反応する。
まぁそうだよね、そう言う会話、普通にあるよね・・・
ふうっと私は気付かれないように小さくため息をついた。
「・・・その・・・入学した時からずっと好きでしたって・・・」
「ほえぇ~!んじゃあ、2年近くも好きでいてくれたんじゃん!」
「あぁ、だから嬉しくてね、応えてあげたいって思うじゃないか!」
ふーん・・・2年ねぇ・・・
顔を赤くしちゃって惚気ちゃってさ、ばっかじゃないの?
そう心の中でそっと毒づく。
「あ、俺、そろそろ行かなくては・・・もうすぐ彼女と待ち合わせの時間なんだ。」
「よーっし!んじゃ一緒に行って彼女に挨拶しちゃうもんね!」
「えぇ!?なんでそうなるんだよ!」
「だってみたいじゃん!相棒の彼女!」
不二も行こうよ~、そう言って、英二がニカッと笑う。
秀一郎が困った顔して、でも嬉しそうに笑っている。
不二は・・・よくわからない笑顔だ。
相棒の彼女・・・か・・・。
「・・・私も行く。」
私がそう言うと、秀一郎と不二がおどろいた顔でこちらを見る。
んじゃ、みんなで行こう~!と英二が秀一郎に抱き付いて言う。
なんで璃音までって秀一郎が慌てて言うから、だって見てみたいじゃない?あんなデートでもあんたを嫌いにならない天使の顔、そう言って私が席を立つ。
そう、ただ単に興味があるだけ。
秀一郎の彼女の顔を見てみたい。
どんな娘が秀一郎の心を射止めたのか
どんな娘が秀一郎の頬を赤く染めるのか
どんな娘が秀一郎に大切にされるのか
秀一郎に想われているのはいったいどんな娘なのだろうか
私が長年恋い焦がれ、どんなに望み続けても、手に入れることが出来ないその地位を、みごとにあっさり手に入れた
女性の顔を見てみたい―――
そして私たちはみんなで待ち合わせの昇降口へと向かった。