第1章 月島蛍 ~僕と花~
スプーンがお皿にあたるカチカチという音だけが部屋に響いた。
どう切り出そうか。さすがに僕もカレーを食べに来たわけではないし。
志向を巡らせながらカレーを口に運んでいると、さんが口を開いた。
『あの、月島くんが来てくれたのは、昨日のメールのせい、だよね?』
「他に何かあります?」
『、、そうだよね、ごめんね。』
ははは、、とちっとも笑えないくせに、笑って見せるさん。
『クロにね、もう終わりにしようって言われたんだ。』
「はぁ、、、。それでなんて言ったんですか?」
『、、、うん。としか言えなかった。』
「ま、そうなりますよね。」
彼女は僕の斜め左に膝を抱えて座り込んだ。僕はカレーを食べながら、彼女の話を聞く。正直カレーを味わうような気持にはなれなかったけど。
『一緒にいたら、クロも私と離れがたくなるのかなって思ったの、でもそうじゃなかった。』
「自業自得じゃないですか?」
『、、、、月島君厳しいね。』
「僕に甘やかされたいんですか?」
そういって彼女の目を見つめると、もう目を潤ませて今にも泣きだしそうな顔をしていた。
彼女を泣かせたくて来たわけじゃないけれど、甘やかして、傷心に漬け込むつもりでもなかった。
『、、わからない。』
「そんなんだから、漬け込まれるんじゃないですか?、、あ、ごちそうさまです。」
『うん、そうだよね。好きってだけじゃだめだね。』
さんは食べ終わったカレーのお皿をキッチンに片付けて戻ってくると、ベッドにうつぶせに寝転がって鼻水をすすり始めた。
「泣くんですか?」
『月島君、何しに来たの?』
「さあ。、、、だったら、今度はさんが僕に漬け込んだらいいんじゃないですか。」
テーブルのティッシュボックスからティッシュを二三枚とって彼女に渡すと、ズズズーっと鼻をかんで、使用済みのティッシュを僕に返却してきた。
「ちょっと、僕に返してどうするんですか。」
まったく、と飽きれながらゴミ箱に捨ててやる。
座りなおした瞬間、背後から彼女に抱き付かれて、僕は内心少し安心した。
『、、、ねぇ、どういう意味。?』
「そのまんまですよ。」