第1章 月島蛍 ~僕と花~
彼女は僕の手を引いて、ベッドに誘い込んだ。
首にかけてたヘッドフォンを外して、手を伸ばしてテーブルに置く。溢れ出している涙を手で拭ってやって、飽きれた顔で笑ってやる。
「結局泣いてるじゃないですか。」
『ん、ごめん』
「ほんと、バカですね。」
『ん、、、ごめん』
僕の首に手をかけて、引き寄せるようにキスをしてくる。
何度拭ってやっても涙はとまらなくって、よく見たら目の周りも腫れていて、僕に会う前にもいっぱい泣いたんだな、と思った。
「いいですよ、僕は。さんがバカでも。」
『うん、、、。』
「僕も、こんな所まで来て、ほんと大概なんで。」
『、、、ありがと。』
小さく震えている彼女の身体を抱きしめて、ベッドに一緒に横になる。二人で寝るには狭いシングルベッド。
視線が重なる度に唇を重ねると、さんの涙の味がしてしょっぱかった。
眼鏡を外して枕元に置く。
『月島君、服、脱いで、、、』
「、、、自分で脱がせたらどうですか?」
意地悪を言うと彼女は無言で僕のセーターを脱がして、Tシャツを脱がした。自分が着ていたワンピースもするりと脱いで、ストッキングを脱いで、ベッドの下に二人の服が重なり乱れて散らばった。
彼女が脱いでいる間に僕も履いていたデニムを脱いで、お互い下着だけの姿になって、電気を消して再びベッドにもぐる。
掛布団を深くかぶって、もう一度抱き合う。
『月島君、あったかいね。』
「そうですね。」
寝そべりながら彼女の首筋や胸元にキスを落とすと、彼女は涙を流しながら熱い吐息を漏らした。
腕の中に彼女を抱いて、足を絡めていると、なんだか一つの塊みたいな気持ちになって、触れている部分がジンジンと暖かくて溶けてしまいそうになる。
『ありがとう、、、月島君。』
暫く髪を優しく撫でていると、綾世さんは小さく寝息を立て始め、僕の腕の中で眠りについた。
こんな事がなんの解決になるのかと問われれば、間違えなく何の意味もない事。僕だってこんなの馬鹿らしいと思う。
だけど、せめて、
今夜は彼女が寂しくなく眠れるように。
「さん、、、好きです。」
彼女の耳元でそう囁いて、僕も瞼を閉じた。
end.