第9章 6/13菅原孝支HB 〜君の見ている風景の先へ〜
俺が掴んだ手を、彼女もゆっくり握り返す。
『こーゆう下らない事して、自分は特別だって思わないと、動き出せないのかもしれないね、私は。』
「え、、、、ちょっと、一人で自己完結は勘弁してくれよな。」
『ごめん。でも、、、なんかそんな気がしてるの。菅原だって、本当は自分がやるべき事分かってるんでしょ?』
「んー、、、、そうだな、グズグズ言ってても何も変わらないのは分かってる。」
『、、、菅原には菅原しか出来ない事があるよ、きっと。』
そういって彼女は自分の頭を俺の頭にコツンとぶつけてくる。
ってぇ、、、
なんか俺、慰められてる?
「、、、、、もな。」
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翌日。
昨晩の非日常な出来事のせいか、俺はいつもより身体がフワフワと高揚してその割には頭の中にあった靄はすっきりとなくなって、不思議と清々しい気分だった。
朝練で6時半に学校に行くと、校舎の屋上からトランペットの音が朝の白んだ空を目覚めさせるように鳴り響いていた。
彼女は、他の人が練習していない時間に、ただひたすらトランペットを吹いて吹いて吹きまくる事を選択したようだ。
俺はジャージのポケットに手を突っ込んで、白い折りたたんだ紙を広げた。
昨日一晩頭を悩ませて考えた攻撃パターンのサイン。
俺にしか出来ない事。
ほんの一握りのチャンスをものにするための、
精一杯の悪あがき。
「おーーーーす!」
日「あ!菅原さん、はざーーーすっ!」
西「今日早いっすねーーー!!!」
「そうかー?日向、ちょっと俺のトス練付き合ってくれないかな。」
日「もちろんです!!お願いしあーっす!!!」
西「スガさん!!俺も!!!!」
「よーっし!んじゃやるかーー!!」
どんなに足掻いたって、ダメなのかもしれない。
届かないのかもしれない。
それでも、
今俺にしかできない事を。
end.