第8章 6/6 金田一勇太郎HB 〜夏の終わりに〜
目当ての出店を回っては、手を繋いで、店先で離してを繰り返した。
自然と人ごみを歩く時は手をつなぐルールみたいなものが出来ていたような気がして、どちらともなく、手を伸ばした。
座る場所を求めて人ごみを避けるようにして歩いて行くと、いつのまにか、待ち合わせした神社まで戻ってきていた。
『だいぶ静かだね。』
「おう。あ、もうすぐ花火だな。」
『どこか座って食べようか。』
「そうだな。」
ビニール袋を手に提げて、俺たちは石段を登った。
さっきまでの賑やかさが嘘みたいに遠ざかる。静かになると不思議と緊張が蘇る。彼女の下駄の音とか、俺の心臓の音とか手を繋いでいる事とかが、やたらとリアルに感じて、さっきまで騒がしい通りにいたのがなんだか夢の中だったみたいに俺は思った。
「足、それ、痛くねぇの?」
『んー。痛くないけどちょっと疲れたかも。』
「上登ったとこに、確か座れるところあったから、そこで休んで食べようぜ。」
『うん。』
登り切って、石畳を外れて右の方へ折れて歩くと、ベンチがあって、ちょうど街が見渡せるような高台になっていた。
「すごい、、、綺麗。」
さっきまでいたお祭りの出店の列が、眼下に一直線に伸びて、賑やかにいろんな色の屋根が照明で光って連なる。ベンチに腰を下ろし、二人の間に買って来たのを広げると、ソースとか醤油の匂いが混ざって、なんかお祭りの匂いがした。
『、これたこ焼きな。』
「うん、ありがとう。」
『ちょっと冷めちゃったな、ごめん。』
彼女はたこ焼きを一個頬張って、「そんな事ないよ、私猫舌だから。」なんて気を効かせて笑ってくれた。
「あっ、、」
ヒュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、、、、、
ドーーーーーーーーーーーーーン!!
パリパリパリ、、、、、
下の方で、歓声がする。
『ねぇ!金田一くん、ここって穴場スポットじゃない!?
、、、、、すごい。』