第8章 6/6 金田一勇太郎HB 〜夏の終わりに〜
彼女が言う通り、俺たちの目の前には、何も遮る物もなく、赤い大きな花火が夜空に咲いて、小さな火の粉がはらはらと落ちていくのがよく見えた。
目に花火がキラキラと写って、俺は花火よりも、正直隣にいる彼女の方がよっぽど綺麗だと思った。街灯のない神社に、花火が上がるたびに、その光で彼女の横顔の輪郭が浮き上がる。
『金田一くん。』
「っ、、、な、なに?」
『なんか、こーゆうの変かもだけどさ、なんか今、世界に私と金田一くんしかいないみたい。』
「ん、、、、なんかわかるかも。」
『独り占めしてるみたい!花火も、、、金田一くんも。』
「え!?、、俺?」
驚く俺を見て悪戯に笑う彼女は少し照れるように、俯く。
『そ。、、、、あのさぁ、金田一くん。手、、、、、繋いだの、緊張した?』
彼女の問いかけにドクンと一気に鼓動が早まる。
「すげぇ、緊張した、、し、、、今も、してる、、、、!」
『そっか、よかった!、、、うん、、、、、あの、さ、、もっかい、手繋いでも、いい?』
彼女が俺のTシャツの裾をまた甘えるみたいに少し引っ張るから、俺は持ってた焼きとうもろこしを置いて、彼女の手を包む。
お互い恥ずかしくて、顔なんて見てられないから、とりあえず目の前に打ち上げられる色とりどりな花火に目をやってごまかした。
花火が打ち上げるたびに響くデカイ音が、気持ちを逸らせる。
これって、もしかしていい感じなんだろうか。
彼女が俺の手をキュッと握るから、俺もそれに応えるように握り返す。
ずっと、好きでした。
俺の口からこぼれた言葉は、スターマインの空を破くような音にかき消されて、消えた。
でも、まぁ、いいか。
きっとここから何かが動き出すような、
そんな気がするから、、、。
end.