第6章 木葉秋紀 ~片想い~
体育館を出て、部室塔の方へ向かう。
体育館の中にはどこにもいなかったし、後いるとしたら部室くらいだろ。
夏前だとは思えない、初夏のようなうだる昼間の気温とは違った、肌寒い夜。
風が木の葉を揺らすザワザワという音と、他の部活の連中が帰っていく話し声がどこからか聞こえてくる。
バレー部の部室の所まで来ると、やっぱり電気がついていた。
ビンゴ。
ドアノブに手をかけようとした瞬間、ガチャっと音がして、扉が開いたかと思ったら、ボフッと胸元に何か飛び込んで来て、なんだ?と思って目線を下げてみると彼女のつむじがそこにあった。
『ぶふぉっ!っってー、、、びっくりしたぁ!』
「びっくりしたのはこっちだわ。」
『やっぱこーたろーいないんだけど。』
「もう体育館戻ってきてるから。」
『そうなのー!!?もー信じられないアイツ。』
ははは、、
『ね、、木葉、どいてよ?体育館戻らないの?』
俺は自分の胸に飛び込んできた彼女の両腕をぎゅっと掴んだ。
だって、そっちから飛び込んで来たんじゃん?
「もどらない。」
彼女の身体ごと部室に入って、俺は後ろ手で部室のドアを閉めた。壁に着いた電気のスイッチを切ると彼女は俺の腕の中でビクッと身体を震わせた。
ギュッと彼女の身体を抱きしめて彼女の首筋に自分の顔を埋めると、ふわりとしたシャンプーの匂いがした。
「お前さ、木兎の事好きなの?」