第9章 (サンジ、ロー、ゾロ、分岐、後編、一部18禁)
「特殊なルートってのはなんだ。…そしてお前が扱ってるのは酒だけか?」
「………」
りんはニッコリと笑みを作る。
ガタリとゾロが立ち上がった。
「…お前がどんなやつか判ったら、俺たちの船に誘いたい」
「私を?戦力の足しになりませんよ。むしろ荷物に」
「あー?なにいってやがる」
ゾロは言い終わるや否や腰に携えていた剣を抜き放ち、りんに向かって振り抜いた!
ギィィンッ
金属と金属がぶつかる音が倉に響く。
りんは髪に刺していたマドラーでゾロの剣を防いでいた。
「…ほらな」
「もう。試す様な事して」
ゾロが剣をしまい、チンと鞘におさまる。
「店でも視線に気づいてたくせに知らん顔しやがって」
それを見てりんは手にしたマドラーをテーブルに置く。
「ゾロさんだったんですね。人を品定めするように見てたのは」
「旨そうだなと思ってな。見てるうちに気付かれてるのに気付いた」
女として。とゾロが小さく加えた。
じっと二人の視線が絡む。静かに瞳の奥の熱を主張される。
(…あぁ、そうだ。店で感じていたのはこの視線だ)
二度目の感覚。
ゾロがコツリコツリと靴音をさせテーブルを避けながら近づきりんに手を伸ばす。顔にかかってしまった髪を一房、横に払う。
ゴツゴツとした剣ダコのある手がザラリとりんの頬を撫で、顎を少し持ち上げた。
目線は、絡んだまま。
沈黙を終わらせたのはりんだった。
「ゾロさんは、何がしたいのですか」
目線はそらさない。
「…知りてぇ。お前を、全部」
「知ってどうするんですか」
「船に連れてく。ウチの船長を『海賊王』にするのに、俺の名を轟かすのにお前が必要だと確証はないがそう感じる」
ゾロの顔が近づく。同時にりんの顔を寄せる。
「まぁ、これは手始めだな」
お互いの鼻先が触れるほどに近くなった。
「断ります。…と、言ったら?」
「気絶するほどイカせて連れていく」
「あら。海賊って皆さんそんな風に無理強いするんですか?こわい」
ゾロの顔が傾く。酒の香りがする熱気に思わずりんの口が薄く開いた。