第9章 (サンジ、ロー、ゾロ、分岐、後編、一部18禁)
「この倉の手前のは、店にも出してるもののストックなんです。…奥のは、私物ですね」
だいぶ奥から足音がするので少し大きな声でゾロに話かける。
「だから、奥の方から選んでくださいね」
返事がない。
向かったであろう棚の奥に歩を進めた。
「…ゾロさん?見つかりましたか?」
じっとワノ国の酒が並んでいる棚を見つめていた。
「この辺りのか」
「そうです。ワノ国の酒って面白いですよ。同じ酒なのに冷して飲むのと温めて飲むのと、変わるんです」
「…変わる?」
「こう、広がり方というか…試しましょう」
りんが棚から数本選び、飲むスペースへ誘導する。備え付けの棚から出しておいた徳利と杯をゾロの前に用意する。
持ってきた酒、その中の一つだけ指し示した。
「これ、『鏡山』…私のお気に入りです。私にとっては水のようにのみやすいですが、ゾロさんにはどうでしょうね?」
解説しながら、準備をする。
「ワノ国の酒、温度があるんです。雪冷え、花冷え、凉冷え、冷や…冷やは常温です。日向燗、人肌燗、ぬる燗、上燗、あつ燗、飛びきり燗…一度温めたものから温度を落とす燗冷まし。」
「へぇ」
一つの酒で全ての温度を用意した。
「さ、どうぞ」
ゾロが舌で少し唇を湿らした。その仕草が妙に色気があってりんの心臓がドキリとした。
一通り試飲したゾロは
「…いいな。他のも試したい」
「どうぞ。つまみも用意しましょう」
りんが備え付けのキッチンでつまみを作り持っていく。
ちょうどゾロがもう一種の酒を試飲しおえていた。
「店でも思いましたが、お強いですね」
「んん?オレはこんなんじゃ酔わねぇよ」
ぐいっと杯に残っていた酒を煽る。
「お前も飲めよ。店はおわってんだろ?」
「あら。じゃあお言葉に甘えて…頂きますね」
りんは気にいっている酒を冷やしながら飲む。
「氷を使わないで冷して飲むのは、いいな。酒が薄まらない」
「そうでしょう?ウィスキーなんかはそうやって濃度を楽しむのもいいのですが、ワノ国のコレは全体を冷して飲むとスッキリして」
「しかし温めてのむのも香りが広がる。…なるほど、おもしれぇ」
ゾロの満足気な顔をみてりんはふふふと笑った。
「良かった。気にいって頂けたようで」
で?と、ゾロはきく。
「…で?とはなんでしょう?」
