第6章 (アイスバーグ、パウリー、告白)
それは決意のように聞こえた。
パウリーの握りこぶしが震えている。
「だか、だからっ…だからっっ……待ってて、くれないか…?」
「…はい?」
バッと顔をあげたパウリーは、そのままりんの手に有ったパンを奪うように取り、走って裏出口から出ていってしまった。
その顔は微かににやけていたような気がした。
聞き返すつもりで言った返事はパウリーに大きな勘違いをさせてしまったらしい。
(…ま、いいか)
明日、また借金取りか取り巻きに追われながらここにくるだろう。その時にきちんと話そうとりんは考えた。
自分はそんなつもりはなかったから、どうか友達から始めたい旨を。
夕方、店じまいを進めていると店出入口のベルが鳴った。
入ってきた人物ににっこりと笑みを送る。
「あら、アイスバーグさん。どうされました?」
「ンマー、悪いな閉店後に」
カツカツと、靴音を響かせ店内カウンターに寄る。
「ウチのパウリーがまたツケでパンを買ったようで、支払いにな」
そう、パウリーはツケているつもりだが
実は毎日アイスバーグか秘書が支払いに来ている。
その支払い分は給料からしっかり天引きされている訳だ。
「ふふふ。今日のパンはいかがでしたか?」
「ンマー、なかなか美味ったな。アレはまた食べたい」
「ありがとうございます。じゃあまた作りますね」
それから…とアイスバーグが続けるのでりんは首を傾げつつ聞いた。
「その…今日、パウリーと何かあったか?」
「え?」
「いや、午後のパウリーの様子が変だったからな」
何もないところでつまづいたり、カナヅチを指に打ったり、大変だったんだと説明する。
話していいものかと考えるが、詳細は話さないことにした。
「パンを取りにいらした時に、ちょっとお話を…今日私が着ていたものがハレンチだって」
笑いながら一部だけ話す。
「ンマー、そうなのか?ここからはカウンターで見えないが…パウリーはいつも裏から?」
「えぇ、入ってきますよ」
アイスバーグがなにやら考えこんでいる。
「…りん、少しいいだろうか?」
「はい、なにか?」
アイスバーグはりんの目を見据えた。
今日、同じような目を見たなとりんは思った。