第4章 (ロー、シャチ、とりあい?)
ローの部屋でりんは文字の書き取りをしていた。どうやら力が入るとペンの持ち方が悪くなる。
後ろから抱き締めるようにしてローはその持ち方をなおした。
「もう一度書いてみろ。…そう、『りん』。それでいい」
りんはローの顔を見上げる。
「ん?おれの名前か?」
さらさらと書いてやると文字が多いと思ったのか一瞬怯んだように見えたが、
気を取り直したようでゆっくりとローの字の下に真似をし始めた。
かり、かり、かり…
かり、かり、がり…がりり。
「ほら、持ち方」
りんがまたローを見上げる。
口元が歪み、上手くいかないことに苛立っているようだ。
「大丈夫だ。練習しよう…な?」
りんは不服そうに足をブラブラさせながら、それでも書き取りを続けた。
船にのせた頃は肋骨が浮き出て、ガリガリに痩せ細り
自力で歩けるほどの筋肉もなく
骨格も歪み真っ直ぐに立てていなかった。
今も変わらず声がだせないが、それでも随分と表情が現れるようになったものだ。
「いつか、お前の声が聞きたいな」
軽く、りんの頬に口付けした。