第1章 1
「これこれ。ゴーヤ。もうすっかり熟れて、今晩くらいには実がはじけるかも。
今晩か明日の昼までに使ってもらえると嬉しいな。
なかの種は甘くて美味しいから、フルーツがわりに出してもいいかもね」
「わぁ!黄色いゴーヤなんてはじめてみました!」
絵麻ちゃんが嬉しそうに手を合わせて喜んでいる。
こんな風に喜ばれたことはあまりないのでなんだか気分がいい。
「あとはトマトがたくさんと、ナス、きゅうり、ピーマン、オクラとトウモロコシと枝豆とかの夏野菜をいっぱいもってきたんだ。
形のいいものは出荷しちゃうからあんまり綺麗なのはないんだけど、よかったらつかってね」
「ありがとうございます!」
「じゃあ適当に冷蔵庫とかに詰めておくね」
箱をもって立ち上がると、絵麻ちゃんは、悪いです!と立ち上がった。
「あら、根性あるんだね」
私は意地悪い笑みを浮かべながら試しに絵麻ちゃんに箱を渡してみた。
すると、彼女は箱を受け取ると頼りなさげによろめいた。
雅臣が慌てて立ち上がり、彼女を支える。
私はすかさず彼女から箱を取り返し、笑った。
「重いよー?私は毎日力仕事してるから持てるだけで」
「ジュン、からかうのも程々にしてくれよ」
雅臣は困り顔でため息をついた。
「あはっ。素敵なお兄さん」
私は台所にある大きな冷蔵庫をあけ、テキパキと箱の中身を冷蔵庫に詰めていく。
「すみません、お客様なのに…」
台所のカウンター越しに、絵麻ちゃんが申し訳なさそうな顔で言った。
「いーのいーの。気にしないで」
そういうと、彼女のポケットから軽快な着信音が鳴り響いた。