第1章 1
優しげな声がして、顔を真っ赤にした可愛らしい彼女の肩に大きな手がかかった。
「ま、雅臣さん…」
「あれ、雅臣。休みだったんだ」
棒付きキャンディをくわえながら玄関に現れたのは、朝日奈雅臣。
朝日奈家13兄弟の長男だ。
「ジュン。半年ぶりだね。そろそろくるんじゃないかと思ってたよ」
「あの…この方は?」
妹ちゃんが雅臣にそう聞いた。
「あぁ、君はまだあったことがなかったよね。この人は金井ジュン。
大学の同期なんだけど、今は農家をしてて
夏と冬に野菜をおすそ分けしてくれるんだ。
こちらは朝日奈絵麻ちゃん。いろいろあって僕たちの兄妹になった子だよ」
「紹介ありがと。私は金井ジュン。雅臣の言ったとおり、こいつと同じ医大にいたんだけど訳あっていまは農家してるの。
ま、楽しいからいいんだけど。さっきはごめんね」
「こちらこそ、動揺してしまってすみません…
自己紹介がおくれました、朝日奈絵麻です。こっちはジュリといいます」
絵麻ちゃんは肩に乗っているリスまで丁寧に紹介してくれた。
「立ち話もなんだし、お茶でも飲んで行きなよ」
雅臣はのんびりと手招きをした
。
「じゃあお言葉に甘えて」
私がそういって箱を抱え直して
何年かぶりにサンライズ・レジデンスにお邪魔することになった。