第1章 1
ピンポーン…
一年に数回、私はこのサンライズ・レジデンスというマンションの
5階のインターフォンを鳴らす。
蝉時雨の昼。
あまりの暑さに麦わら帽子を頭からとり、うちわがわりに仰ぐ。
「あーっついな…」
空を仰ぐと、胸をすくような青い空を
もこもこと大きな白い雲がのんびりと泳いでいる。
なかなか人がでてこない。
夏休みなのだから誰かはいると踏んでいたのだが、
読みが甘かったのだろうか。
再度インターフォンを押そうとすると、大きな扉から人影が現れた。
「ったく遅いよ!こんな暑いのに…って…」
現れた人影は見慣れた13兄弟の誰でもない、小柄な女の子だった。
セーラー服は見間違うはずもない陽出高校の夏服。
茶色の髪は涼しげなアップで、
肩には大きなリボンをつけたリスが乗っている
。
「…と、あなたは…高校生…それに陽出高ってーと…
…あれか、侑介の彼女さん?かな?こんにちは」
私がそう聞くと、彼女はたちまち顔を真っ赤にしてしまった。
今時珍しいくらいウブな子だ、
とほっこりしていると彼女からは全力の否定をもらった。
「ち、ちちち、違います!わ、私は…」
「俺たちの兄妹、だよ」