第2章 2
「決着はついたの?」
「…うん。長かった」
「ほんとに長かったわね」
光は静かにそう言った後、ふっと雰囲気を変えた。
「決着ついた記念に俺と試しに付き合ってみるのはどう?」
「なにいってんの。今日は女子会でしょ?土下座されてもヤダよ」
釣れないわね、と光は綺麗に笑った。
「あんたこのまま独身でいるつもりなの?」
「さぁね?先のことはわかんないよ。独身ならそれでもよし。
光こそ人のこと言えないでしょ」
「ヤダわ。優しくないのね」
ゆるゆる、生産性のない話ばかりを続ける。
いつも通りの女子会。
光には甘えてばかりだ。
でも、こんな話をできるような友人はとうの昔にいなくなった。
みんな医者になって、忙しくしている。
そんな私を哀れんでなのか、
たまに日本に帰ってくると光はこうして付き合ってくれるのだ。
いつまでもこの優しさに甘えるのは
お互いのためにならないとわかっているのに。
ワインボトルもほとんど空きかかっている。少しずつ注がれるワインはぬるいばかりだ。
「こうやって光としゃべるのは好きだな。申し訳なくも思うけど」
「ほんとにね。もう少し申し訳なさそうにしなさいよ。アタシはただのオカマじゃなくて仕事で女装してるだけなのよ?そろそろ見返りが欲しいくらいだわ」
「おすそ分けの野菜で勘弁してよ」
「色気がほしいわ」
「パプリカとか?」
はっ、と鼻で笑われ、彼女は細いタバコを取り出して火をつけた。
軽く息を吸い、ふっと煙を吐き出してから、
再びタバコの先から煙を吸って口からタバコを離す。
タバコの先の火がくすぶる音と、静かな息を吸う音がが聞こえる。
光は上を向いてフーッと薄くなった煙を吐き出した。
「アングラなものってのはどうして人を惹きつけるのかなぁ?」
「ジュンも吸う?」
「野菜に嫌われちゃうから遠慮しとくよ」
アンタらしいわね、と薄く笑われた。