第1章 1
玄関先での優しげな手の掛け方、彼女を褒めた時の嬉しそうな顔、
彼女がよろめいた時の慌て方、
彼女が弥と仲睦まじくしていた時の切なげな表情。
初めて出来た妹、家族としての愛情ゆえかもしれない。
でもどうしようもなくわかってしまう。
人の心と向き合い続けた医者としての経験が。
なにより女性としての心や勘が、
そんなものだけではない、と主張を続けている。
「ねぇ雅臣。あんた、絵麻ちゃんのこと…」
「家族だよ。大切な、妹。それ以上でも…」
以下でもない。その言葉はでてこなかった。
「なに泣きそうな顔してんのさ」
気づきはじめてるくせに。
泣きそうなのはこっちもだ。