第11章 【それでもここにいる その4】
「面白いじゃん、かかってこい。」
志野は菅原さんから超逃げるべきだなと木下は思った。
そして昼食の時だ。食堂にて烏野勢が座っている所へまたも赤葦がやってきた。
「ごめん、うちのペット見なかった。」
動かぬ表情で堂々とペット呼ばわり、しかし当の赤葦にはユーモアを混ぜたつもりはないらしい。
「や、いねーけど。何で俺に聞くんだ。」
木下は首を傾げるが
「隙あらば君と一緒にいるから。」
赤葦は当然だろうと言わんばかりだ。
「何かちげー気がする。とりあえず俺は見てない、便所じゃね。」
「あり得るな。ありがとう。」
赤葦は去っていく。
「普通に話通じてるのが怖いんですが。」
月島が呟いた。
「だってあっちのチームでペットっつったら他にいねーもん。」
木下は笑いながら言っていると耳元で成田がおい木下と囁く。何だよと思って成田がコソッと指差している方を見ると
「げっ。」
志野健吾本人がいた。
「どーもそのペットでーす。」
みょんと片手を上げて言う志野の顔は怒ってはいないが開き直った感じがある。
「よ、よー、志野。」
「ちわっす、木下さん。すみません、何となく聞こえちまったもんで。」
「あ、ああ、赤葦がお前探してこっち来ててよ。」
「それは失礼。便所行ってただけなんですが。」
「んでうちのペット知らないかって。」
「くっそお赤葦さんひでえ。戻ったら抗議してやる。」
「返り討ちに遭うんじゃね。」
「また何でそういう可能性の高い事を。」
「他に考えらんねーもん。」
むうとした顔をする志野に対し木下はついシシシと笑う。
「つかそろそろ行かねーとまた首根っこ掴んで回収されっぞー。」
「ぐああ、遠いとこの人までひでえっ。でもホント行こ、失礼します。」
「おー。」
ぺこりと頭を下げて志野は梟谷の面々が固まっているテーブルの方へ去っていく。きっちり赤葦にとっ捕まり何か言われて返しているのが見えた。余計な事でも言ったのか一瞬じっと見つめられて固まり、そうかと思えば木兎に捕まって頭をワシャワシャされている。