第11章 【それでもここにいる その4】
全員返事をして清水と谷地がマネージャーが泊まっている所へ引き上げていき、野郎共もそれぞれ布団に潜る。
それから照明が消された就寝直前、木下は縁下と成田の挟み撃ちにあった。
「伝言以外の日向の話知ってたろ。」
縁下がコソッと言う。顔はよく見えないが声からして多分笑っているだろう。
「忘れ物見てくる割には帰ってくるの遅いと思ってたんだよな。」
成田もしょうがないなあといった風に言う。
「ほっとけよ。つか寝る前に挟み撃ちとかお前らどSか。」
悪い悪いと成田が忍び笑いをし縁下はさあなと流した。
「ったく。」
木下は呟いて布団をかぶる。
「木下、」
目を閉じる前に縁下に言われた。
「大丈夫なのか。」
何故だろうか、何の話かを木下は察していた。
「大丈夫だよ。」
目を閉じ縁下がいる方に背を向けて木下は答えた。
「でなきゃ何で戻ってきたんだかわかんねーじゃん。」
縁下が安心したようにそっかと呟くのが聞こえた。
そんなこんなで合宿の日々は続く。
「木兎さーんっ、もう一本っ。」
梟谷側から応援の声が聞こえる。
「おおおおお見たかっ、最強俺サーブっ。」
「後はコントロールの改善をお願いします。」
「あかーしっ、空気読んでっ。」
やかましい木兎と冷静に言う赤葦の声も聞こえる。
「くっそー、いーもんねっ後で志野に遊んでもらうからよっ。」
「志野で遊ぶの間違いでしょう。とにかく世話もちゃんとするように。」
「そこペット枠で話進めるなっ、小見さんは笑うなーっ。」
「志野うるさいっ。」
「理不尽っす、雀田さんっ。」
やり取りは全部対戦していた烏野側にも聞こえている。木下はおーやっとるやっとると思いながら聞いていたが見れば縁下他ウォームアップゾーンにいた連中が肩を震わせていた。
「木下、お前よくあんなの相手してるな。」
笑いを必死でこらえる縁下に木下は特別なこたないと思う。
「話してたらおもしれーんだよ、何となく。」
「あ、そのペット監督に怒られてら。」
菅原までもが注目してはどうしようもない、かもしれない。
「それ聞こえたらあいつ多分こっちにも突っ込み入れてくるっすよ。」
木下は念の為忠告したが菅原はあははと笑う。