第11章 【それでもここにいる その4】
「驚きゃしません、月島君ならそんくらいは言うでしょう。」
「冷静だな。日向あたりはよくわあわあ言ってる。」
「こっちゃただの痩せ我慢です。俺の方がえらい目にあわされましたがそれをわあわあ言った結果月島君に鼻で笑われる方が嫌です。チームの方の前で申し訳ありませんが。」
「いや、その、まあ」
木下は不器用に呟く。
「ひねくれだからわかりづれーけど悪い奴じゃねえから。」
「山口君、でしたか、彼が一緒にいるあたりそうなんでしょうね。」
「ホントよく見てんなぁ。」
「そうでもないっす。音駒の福永さんが無言で孤爪さんと会話してるのを見かけたとかそちらの副主将の方がたまに俺をチラチラ見てるとかくらいで。」
「色々気づいてんじゃん。」
「あ、木下さんがえーとあの、名前忘れた、5番の人にまたあのハゲ脱いでるとか言ってたのは喋りませんから。」
「喋ったらマジで顔に落書きしにいくぞ。」
「そんなえぐい人は主将さんに言いつけるっすよ。」
「あ、このヤロ。」
木下は志野の頭を小突き志野はヘラヘラと笑う。
「んじゃ俺本当に行ってきます。」
「おう、じゃあ後でな。」
「はい、失礼します。」
志野は昨日のあの時のように柔らかく笑う。それは心で泣いている様子がなかった。
次章に続く